東洋医学って何だろう? 第51回~ 木の芽時は体調不良にご用心 ~ 平成25年5月26日(日)

 皆さんお元気ですか?
 最近、昼間と朝夕の気温差が15度近くもあるような日が出始めています。こんなときは、体調を崩しやすいものです。くれぐれも、朝夕だけは防寒に心がけてくださいね。
 今回は、そんな「”木の芽時”」の体調不良について、皆さんと一緒に勉強したいと思います。

1.木の芽時になると体調が悪くなるのはなぜ?
 春は木の芽時とも呼ばれています。多くの人たちが、様々な体調不良を訴えることでも有名な季節です。
 その原因は、自律神経のバランスの崩れが大きく関わっているといわれています。
 自律神経には、交感神経と副交感神経の2つがあります。
 一般に、交感神経は怒りや不安、寒さ、そして厚いお湯に入浴したときなどにその働きが高まってきます。このような原因をストレスと呼んでいます。
 その際、心臓の拍動は速くなり、血管は収縮し、血圧を上げ、血液の流れを悪くしていきます。
 逆に、副交感神経は様々な緊張から解放されたときや、身体を温めたとき、そして、ぬるめのお湯に入浴したときなどに働いてバランスを整えようとします。
 すると心臓の拍動は穏やかになり、血管は拡張し、血圧を下げ、血液の流れが良くなっていきます。
 冬場は、「寒さ」というストレスを受けることで交感神経の働きが高まり、血圧も上がっています。それが、春になり、暖かくなることで、「寒さ」というストレスがなくなって高まった働きが下がってきます。
 この急激な変化に対応できなくなって、体調不良を訴えるようになるのです。加えて、生活環境の変化や、花粉症の影響などがそれに拍車をかけていきます。
 体調を崩すことで頭痛、めまい、動悸、便秘や下痢、疲れやすい、冷える、精神不安定、うつ傾向など、多くの症状が現れてきます。
 このような症状が現れる状態を”自律神経失調症”と呼んでいます。

【東洋医学コーナー】
 東洋医学では、身体に寒さや精神的なストレスなどが加わって、体調不良に陥った状態を”気滞”と呼んでいます。
 これは、経脈(気が流れる通路)が収縮して、気の流れが悪くなった状態を指しています。
 木の芽時は、まさにこの”気滞”が現れやすい季節だとも言えるのです。
 このようなときは、緊張を和らげるために、マッサージやはり治療などを行い、経脈の収縮を緩めて、回復させる治療を行います。

2.自律神経のバランスを整えることが大切
 私たちが健康な毎日を送るためには、自律神経の働きを安定させることが重要な意味を持ってきます。つまり、交感神経と副交感神経のバランスを整えることが大切になってくるのです。
 人の身体には60兆個の細胞があると言われています。健康であるということは、この60兆個の細胞に充分な血液が送られていることを意味します。
 しかし、寒さや感情のいらだちなど、多くのストレスによって、交感神経の働きが高まると、血管が収縮し、細胞に流れる血液量が減ってきます。これが持続すると、細胞の老化に陥り、様々な病へと発展していきます。
 健康を維持するためには、このような寒さを遠ざけ、感情を安定させることが必要になってきます。

 ☆ 自律神経のバランスを整えよう! ☆
 自律神経のバランスを整えるためにとても有効な方法として、毎朝起きたらすぐコップ1杯の水を飲むというのがあります。決して、夏場でも冷たい水を飲んではいけません。

3.休日でも、平日どうりの生活を!
 休みだからといって、遅くまで寝ていてはいけません。自律神経は、リズムが重要なんです。要するに、いつもと同じ時間に起きることが大切なんです。
 自律神経は年齢と共に衰えてきます。特に副交感神経の働きは衰えやすいと言われています。男性は30代、女性は40代からレベルが下がってきます。
 すると、交感神経の働きが優位となり、血管は収縮しやすくなって、様々な病へとつながっていくのです。
 一例を挙げると、副交感神経が衰えると免疫機能が低下してきます。すると、ガンが起きやすくなるといわれています。
 普段から、風の強さや香り、鳥の鳴き声、草花が咲いている様子など、「自然」を意識して生活することが大切です。そうすることで、普段見えていないものが見えてくるようになります。
 すると、自律神経のバランスが整ってきて、血流も良くなってきます。

4.自律神経失調症チェックリスト
  最近、次のような症状が気になっていませんか? 気になる症状を数えてみてください。
 ① 耳鳴りがする。
 ② めまいがする。
 ③ 胃の具合が悪い。
 ④ 突然冷や汗がでる。
 ⑤ 下痢、あるいは便秘をする。
 ⑥ 急に体があつくなったり、冷たくなったりする。
 ⑦ 吐き気があったり、吐いたりする。
 ⑧ 手足が冷える。
 ⑨ 足がだるい。
 ⑩ 仕事をすると疲れてぐったりする。
 ⑪ 息苦しくなる。
 ⑫ 動悸がして気になる。

 ☆ 判定
  「3つ以下」 : 比較的軽い状態です。それほど気にする必要はありません。
  「4~7つ」 : やや症状の数が多いですね。生活習慣を見直しましょう。
  「8つ以上」 : かなり悪い状態です。主治医の先生に相談しましょう。

5.自律神経のバランスを整える生活習慣とは?
 ストレスを受けると、自律神経が乱れ、血流が悪くなります。しかも、一旦バランスを崩すと、3時間は崩れた状態が続くと言われています。
 一旦乱れた自律神経のバランスを元に戻すためには、生活習慣の見直しが必要になってきます。
 次のような生活習慣を心がけましょう。

 ① 起床時にコップ1杯の水を飲み、朝食をしっかり食べる。
  朝食を食べないと、朝起きても身体は起きていない状態と変わりません。すると、自律
  神経のバランスが崩れたまま、昼を迎えることになります。
  また、朝は余裕を持って生活することが、自律神経のバランスを整える意味で重要で
  す。
 ② 夕食は、寝る4時間前には済ませておく。
  夕食が遅いと、布団に入っても消化吸収の働きが続いてしまうことになります。すると、
  自律神経のバランスが崩れて、眠りの質が下がります。
  また、食べる量を増やすと、消化管にストレスをかけてしまいます。腹8分目が良いので
  す。
 ③ 睡眠不足になると、自律神経が乱れる。
  充分な睡眠が得られないと、心身の疲れは取れず、自律神経のバランスも崩れてしま
  います。
  寝るときに、副交感神経の働きを高めるためには、腸内環境を整える乳酸菌が重要で
  す。そのためには、夕食に発酵食品や食物繊維をしっかり取ると良いといわれていま
  す。
 ④ 毎日、適度な運動を
  一日20分のウォーキングや、階段登りなどをすることで、自律神経の働きが全く変わっ
  てきます。
 ⑤ 吐く息を長くする呼吸法を心がける
  自律神経を一発で整えてしまう方法として、「ワンツー呼吸法」というのがあります。
  吸う息を1とすると、吐く息を2または3にすることで、自律神経は整ってきます。
  つまり、ゆっくり息を吐けばいいのです。
  これにより、下がりやすい副交感神経のレベルを挙げ、緊張が解け、血流もよくなっ
  てきます。

 ☆ ストレスって何? ☆
 ストレスには、「肉体的ストレス」と「精神的ストレス」の2つがあります。
  重い物を持って身体が疲れたり、寒さで体調が悪くなったりするのは、「肉体的ストレス」によるものです。
 また、怒りのため心臓がドキドキした後や、混雑した場所で買い物をしたときは、「精神的ストレス」による疲れが起こります。
 いずれにせよ、ストレスとは血管を収縮させて、血液の流れを悪くする原因のことを言うのです。

6.まとめ
 年を取るにつれて、自律神経のバランスが徐々に崩れてきます。
 すると、今まで感じなかったような様々な症状が気になり始めます。その中には、精神的な不安定状態も含んでいます。
 このような場合は、生活習慣が乱れていないか、自己診断チェックをしてみてください。
 合わせて、朝起きてすぐ飲むコップ1杯の水と、ワンツー呼吸法を試してみてくださいね。

 5月も終わりになりました。南の島では、もう既に梅雨入りしたというニュースが伝わってきています。
 1年の中で一番過ごしやすいこの時期を、自然とふれあいながら思う存分楽しんでくださいね。

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