第9回 脱水症にならないために (H20.10.12)
1.体内に含まれる水の量とその役割は?
人の体には、胎児で体重の約90%、新生児で約75%、子どもで約70%、成人では約60~65%の水が満たされています。
これでわかるように、年を取るにつれて、体内に含まれる水の量は減ってきます。
つまり、高齢であればあるほど脱水症になりやすくなるわけです。
この水の主な働きを、大きく3つにまとめると次のようになります。
① 体調の保持
カリウムやナトリウム、そしてカルシウムなど、身体に必要なミネラルが溶けており、体調を維持するのに重要です。
② 物質の運搬
血液に混じって、酸素や栄養素を全身に運んだり、不必要な物質を腎臓に運んで排泄したりします。
③ 体温の調節
汗をかいて、必要以上の体熱を発散させたり、全身に体温を運んだりして体温の調節を行います。
【成人の1日の水バランス(体重60㎏の場合)】
① 摂取合計 2,500ml
食事 700ml
飲水 1,500ml
代謝水 300ml
② 排泄合計 2,500ml
不感蒸泄(汗、呼気) 900ml
尿 1,500ml
便 100ml
【東洋医学コーナー】
東洋医学では、体内に含まれる水のことを「津液(しんえき)」と呼んでいます。
「津」はさらさらした水を指し、「液」とはねっとりとした水を指します。
津液は、体内を潤したり、栄養などの運搬をおこなっています。
なので、津液が不足してくると脱水状態や栄養障害などを引き起こすのです。
また、体内をスムーズに流れているうちはいいですが、何らかの原因で「濁り」が現れると水の流れが滞ってきます。
この濁りを「痰湿(たんしつ)」と呼んでいます。
この痰湿が現れると、体内のあちこちで悪影響を及ぼして、病の原因となるのです。
2.脱水症を起こす原因は?
高齢者に脱水症が生じやすい原因には次のようなものがあります。
① 水分の摂取不足
トイレに行く回数が増えるのを恐れて飲水制限をしてしまいます。
また、年と共に、のどの渇きが減ってきます。
② 水分を貯蔵しておく部位の減少
高齢になると、水分を貯蔵することができない脂肪の割合が増えてきます。
太っていればいるほど、脱水症になりやすくなります。
③ 体内の水分減少
加齢による基礎代謝の減少により、体内でつくられる水が減少します。
細胞の老化は、細胞内に含まれる水の減少をもたらします。
その為に若い人たちより水分代謝のバランスを崩し易くなっています。
④ 水分排泄の増加
腎機能の低下、つまり尿濃縮力の低下により、薄い尿を多く排泄してしまうようになります。
また、利尿剤などを服用している場合も含めて、必要以上に水分を排泄してしまう場合があります。
⑤ その他
発熱、発汗の際にも水分は失われます。
3.脱水症を予防するには?
以下のことを守ってください。
① 快適な環境づくり
夏場は、クーラーなどで、また冬場は加湿を心がけて利用者の体にあった状態に室温をあわせましょう。
② 水分補給
トイレが近くなることを恐れて水分を控えているお年寄りがみられますが、脱水症予防の観点からはとても危険です。
また、脱水症だけでなく、血液が濃くなって心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性も高まります。
これらを予防するためには、水分を一度に取るのではなく、こまめに摂取するのがよいとされています。
③ 塩分補給
汗はほとんどが水分ですが、塩分等の電解質も含まれているため、これらの補給も必要となってきます。
また、高齢者は尿からの塩分の排出も多いので、高血圧等で塩分を控える必要がなければ、適正な塩分の補給が大事です。
例えば、夏場は漬物や梅干し等で塩分を取ることが有効です。
④ 検温と皮膚状態の確認、医療機関の受診
脱水症状の疑いがみられたら、検温とともに脇の下に手を入れて皮膚が乾燥しているかをチェックします。
高齢者の脱水症はわかりにくく重症な場合もあるため、場合によっては医療機関を受診しましょう。
⑤ 意識確認
脱水症を起こしかかっている場合や、呼びかけに応答しないなど反応が乏しいときは、すぐに医療機関へ搬送しましょう。
4.脱水症チェックリスト
以下の項目で、当てはまるものが多ければ多いほど、脱水症になりやすくなりますので気をつけてください。
- 日頃お茶などの水分をあまり飲まない。
- 1日に3回、食事をしていなかったり、食事に汁物をつけない。
- うまく食事が飲み込めない。
- 排尿回数が減っていたり、便秘気味である。
- 尿が濃い黄色になっている。
- 唇や皮膚が、以前よりカサカサしている。
- せきや痰などの感染症状がないのに微熱が続く。
- 汗をかいて、なんとなくぐったりしている。
- 下痢や嘔吐をしている。
- アルコールを飲んだ後は、ほとんど水分を取らない。
- 筋トレやウォーキングをしながら水分を取らない。
- 入浴前後に水分を取らない。
5.まとめ
のどが渇いたなと思ったときは、1%の水が失われていると言われています。
体重60㎏の人に含まれる水分は36㎏です。その1%とは360㏄です。
一度に360㏄を飲むとトイレに行く原因となりますので、こまめに何回かに分けて取っていくのがよいとされています。
例えば、1時間毎に湯飲みで1杯程度(100㏄)のお茶を飲むというのはどうでしょう?
みなさん、いろいろと工夫してみてくださいね。
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