第21回 知っておきたい冬場の入浴法 (H21.12.20)

今年も後少しで終わりですね。明後日、22日は冬至です。「ゆず湯」に入られる方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回はそんな冬場の入浴法について、みなさんと一緒に勉強してみたいと思います。

 

1.健康的な入浴法とは
健康的な入浴法をまとめてみました。是非お試しください。

① お湯の温度
血圧の高い方や心臓に病を抱えている方、そして65歳以上のご高齢の方は42℃以上の高温浴を避けて、
なるべくぬるめのお湯(温度が39℃前後の微温浴)を選びましょう。
39℃前後の微温浴は緊張した筋肉をゆるめて痛みを取り、血液の循環を改善し、
血圧を安定させ、胃酸の分泌を高めて食欲を増進させます。
また、自律神経失調症、高血圧、不眠、胃腸病、心臓病を抱えた方などは、その症状を和らげると言われています。

② 入浴回数と時間
一般に、一日の入浴回数は、「湯疲れ」を防ぐために1~2回としましょう。身体の具合に合わせることが大切です。
心臓の調子が悪い方は、普段から主治医の先生に相談しておきましょう。
入浴の時間は温度によります。熱めでは短時間、ぬるめでは長くなります。およその目安は、額にうっすら汗ばむ程度です。

③ 浴槽に入る前
冬は浴室を22℃以上に暖めておきましょう。
また、食事の直前、直後の入浴はよくありません。
特に食事の直後は、消化・吸収に必要な血液が胃腸に多く集まります。
そのため、入浴することにより消化・吸収がうまく行われなくなります。
したがって、食後は少なくとも1時間の休息が必要です。
入浴する前には、温かい水分を補給しましょう。
そして、必ず手足からお腹、そして肩へと順番にかけ湯をしてから入浴するようにしましょう。

④ 入浴中
血圧の高い方、心臓に病を抱えている方、そして65歳以上のご高齢の方は、どっぷり肩まで浸らず胸の線までに止めましょう(半身浴)。
または、浴槽の縁を枕に手足を伸ばし、浮力を利用して浮いた姿勢で浸りましょう(寝湯)。

⑤ 入浴後
冬場の入浴後は身体が冷えやすいので、なるべく早めに就寝するようにしましょう。
身体が冷えてから布団に入るのは、眠りを妨げる原因につながります。
また、温かい水分の補給も忘れずに行いましょう。
入浴後、すぐに就寝しない方は、必ず靴下を履いて足下の保温に努めましょう。
足が冷えると、神経痛や腰痛の原因につながります。

【東洋医学コーナー】
東洋医学の考え方の基本は、「陰陽」のバランス調整です。
人の身体は、夏場は体温があがり陽に傾き、冬場は身体が冷えて陰に傾きます。
冬場の生活では、陽性の飲食を行い、足下を温め、運動や入浴をして身体を温めることが大切となってきます。
冷蔵庫の中のものは、陰性に傾いているものばかりです。
必ず、温めてから食べるように心がけましょう。

 

2.入浴事故はどうして起きる?
年間14,000人もの方々が、入浴中に死亡していると言われています。
このうち、浴槽での溺水による死亡者は、毎年約3,000人にのぼります。
そのうち約85%が65歳以上のご高齢の方です。
このような入浴中の死亡事故をヒートショックと言い、11月から3月にかけての寒い時期に多発しています。
ヒートショックの引き金となっているのが「心筋梗塞」で、ついで多いのが「脳卒中(脳出血と脳梗塞)」です。
事故の多くは、温度差による血圧の変動が大きく関係していると言われています。

① 心筋梗塞や脳梗塞が起こる理由
お風呂につかって身体が温まると、今度は手足の抹消血管が広がって血圧が下がり、血流がゆるやかになります。
このとき熱いお湯につかっていると、発汗によって血液中の水分が少なくなり、血液の粘り気が増し、血栓(血液のかたまり)ができやすくなります。 また、飲酒は血管を拡張させて血圧を下げたり、尿量を増加させて血液中の水分が減少するため、一層血栓ができやすくなります。
よって、入浴前の飲酒や、温泉に入りながらの飲酒は非常に危険です。
血栓によって心臓の血管が詰まったものが「心筋梗塞」で、脳の血管が詰まったものが「脳梗塞」です。
これは、熱めの長湯を避け、お湯の温度を39℃前後に保ち、入浴前に水分補給をしておくことで危険性を遠ざけることができます。

② 脳出血が起こる理由
冬の脱衣室や浴室は寒いため、衣服を脱ぐと寒さに反応して、手足の抹消血管が収縮して血圧が上昇します。
この状態で42℃くらいの熱いお湯に入ると、交感神経が興奮し血管を収縮させ、さらに血圧が上昇してしまいます。
特に、高血圧の方は血圧が高くなりやすく、急激な血圧上昇は血管を圧迫し、血管がその圧力に耐え切れなくなると、血管が破れてしまいます。
それが脳に起こったものが「脳出血」で、入浴直後に発症しやすいのが特徴です。
特に、65歳以上のご高齢の方は「動脈硬化」や「糖尿病」といった血管がもろくなる病気を抱えていることが多いため、注意が必要です。
これは、脱衣室や浴室の温度を上げ、お湯の温度を39℃前後に保っておくことで危険性を遠ざけることができます。

③ 溺死事故が起こる理由
入浴中に、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こし、意識障害が起こると、浴槽内で溺れることになります。
これは、長湯により血圧が低下し、軽い血栓が起こったときなどに見られます。
他に「湯あたり」や、「のぼせ」なども意識障害を引き起こします。
湯あたりは、よく温泉などで見られるもので、入浴時間が長くなり、入浴者の意識が低下してふらふらになっている状態です。
一人で入浴中のご高齢の方に「湯あたり」が発生すれば、意識を失い、やがて溺れることにつながります。
意識を失うと、浴槽で溺れ、肺に少量の水が入ったことが引き金となって、そのショックで心臓が止まると言われています。
これは、熱めのお湯に長く入らないことで、危険性を遠ざけることができます。

以上を総合させると、安全な入浴法というのは入浴前後に水分補給をし、脱衣室や浴室を温かく保ち、
お湯の温度は39℃前後、そして熱めの温度の場合は長湯をしないこととなります。

 

3.ヒートショックの危険度チェックリスト
「ヒートショック」とは、入浴中の死亡事故のことです。当てはまる項目の( )内の点数を合計してください。
ヒートショック防止の参考になれば何よりです。

  1. あなたは65歳以上(5点)
  2. 心臓や肺の慢性疾患や高血圧の症状がある(5点)
  3. 自宅の浴室には暖房設備がなく冬は寒い(3点)
  4. 自宅の脱衣室に暖房設備がなく冬は寒い(2点)
  5. 一番風呂に入ることが多い(2点)
  6. よく長湯をする(1点)
  7. 熱い風呂が大好き(1点)
  8. 浴槽に入るときは首まで浸かる(1点)
  9. 飲酒後に入浴することがある(4点)

〈10点以上〉
ヒートショックの危険性が高いので注意が必要です。入浴前に脱衣室や浴室をよく暖めるなど、防止対策をしてください。
また、熱いお湯に入ることは避けましょう。
飲酒後の入浴は非常に危険ですから絶対に止めましょう。

〈9~7点〉
冬場の入浴は、身体に負担がかかります。
脱衣室や浴室の暖房は、ヒートショックの危険性を遠ざけます。
ヒートショックの発生原因に充分注意して入浴するよう心がけましょう。

〈6~4点〉
ヒートショックの危険性はそれほど高くはありませんが、体調の悪い時や、飲酒後の入浴には気をつけましょう。
脱衣室や浴室の暖房は、ヒートショックの危険性を遠ざけます。

〈3点以下〉
このチェックリストで見る限り、ヒートショックの危険性は今のところほとんどありません。

 

4.まとめ
ヒートショックの危険性が特に高いのは、以下の方々です。入浴のスタイルを切り替えていきましょう。

  1. 熱いお湯が大好きで、長湯をする方
  2. 動脈硬化や高血圧を抱えている方
  3. 65歳以上のご高齢の方
  4. 飲酒後に入浴される方

以上のことから、入浴事故を防ぐには、少なくとも次のことに注意してください。

  1. 食後1時間以内の入浴は避ける
  2. 湯温を39℃前後にする
  3. 浴槽から立ち上がるときはゆっくりと

みなさん、寒さが増してくるのはこれからです。
是非、健康的な入浴法を実践しながら、快適で安全な冬場の生活をお過ごしくださいね。

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