第25回 梅雨と梅干し (H22.6.27)
いよいよ梅雨入りですね。
うっとうしい毎日ですが、少しでも気分を快適に過ごしたいものです。
今回は、そんな梅雨という文字にも使われており、健康効果に優れた」梅」について取り上げてみました。
皆さん、是非一緒に勉強しましょう。
1.梅雨の由来は?
梅雨の由来は、中国から「梅雨(ばいう)」として我が国へ伝わり、江戸時代頃より「つゆ」と呼ばれるようになったそうです。
中国では、黴(かび)の生えやすい時期に降る雨という意味で、元々「黴雨(ばいう)」と呼ばれていましたが、
カビでは語感が悪いため、同じ「ばい」で季節に合った「梅」の字を使い「梅雨」になったとする説があります。
また、「梅の熟す時期に降る雨」という意味で、元々「梅雨」と呼ばれていたとする説などもあります。
日本で「つゆ」と呼ばれるようになった由来は、「露(つゆ)」からと考えられますが、
梅の実が熟し潰(つぶ)れる時期であることから、「潰ゆ(つゆ)」と関連付ける説もあるそうです。
2.寒さに負けない梅の花
梅はバラ科に属する落葉高木で、原産は中国とも日本とも言われていますが、
現在日本に生えているのは、両方の合作だと言われます。
梅の花は、まだ寒さの厳しい2月頃、他の木の花に先駆けて咲く生命力の強さがあり、
松や竹とともにめでたい植物とされています。
花の芳香、清楚な姿は我が国民性に合い、昔から句に詠まれ、詩に歌われています。
「東風(こち)吹かば にほひをこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて 春を忘るな」
この句は、日頃梅を愛した菅原道真が、京の都から九州の大宰府に流されたときに
京の自宅に植えてあった梅の木になつかしみをこめて詠んだものです。私のとても好きな句の1つです。
梅の効用は果実で、普通の果物のように生で食べることはなく、大部分は梅干し、梅酒、梅肉エキスなどに加工したり、
梅干しを漬けたときにできる梅酢を利用したりしています。
生の青梅には、青酸と言われる毒素が含まれていますので、そのままでは食べられません。
お酒に漬けたり、加熱すると、毒素は消えてしまいますのでご安心ください。
3.現存最古の梅干しとは?
伝統的製法によって作られた梅干しは、土蔵のように保管に適した環境では腐らず、
100年前に作られたものでも食べられます。
ただし、まれに黒色に腐ることがあり、地方によっては普段腐ることがない梅干しが腐るのは、
何らかの異変が起こる前兆であるという迷信が伝えられている所もあるそうです。
現存最古のものでは、奈良県の中家に伝わる梅干しで、天正4年(1576年)に漬け込まれたものが
良好な状態で保存されています。
また、同家に同じく伝わる江戸時代の安永年間に漬けられた梅干しを試食したところ、まったく問題なく食べられたそうです。
4.梅干しの効能 ~ 8つのポイント
健康効果に優れていると言われる梅干しの効能について、以下にまとめます。
① 疲労を回復する
疲労の原因は、エネルギーを発生したときに生じる「乳酸(にゅうさん)」と呼ばれる物質によるものです。
体の中に乳酸が貯まると体内は酸性に傾きます。これが疲労という形になってあらわれます。
疲労回復のためには乳酸を分解すればいいわけですが、このときに活躍するのがクエン酸です。
梅干しにたっぷり含まれているこのクエン酸は、乳酸を水と二酸化炭素に分解して、体外へ排出する働きがあります。
梅干しを食べることで疲労回復に効果があるばかりでなく、疲れにくく健康な体を作ってくれます。
② 動脈硬化予防
日本人の三大生活習慣病は、ガン・脳卒中・心臓病です。
このうちの脳卒中と心臓病は、動脈硬化が主な原因といわれています。
中高年になると、血管の老化や生活習慣の乱れなどが原因となって、血管の内壁にコレステロールや老廃物が付着し、
血管の壁が厚く硬くなることがあります。
そのために血液が流れる血管そのものが狭くなり、詰まりやすくなります。これが動脈硬化です。
梅干しは、乳酸を分解するクエン酸が豊富と上記で述べましたが、乳酸はまた動脈硬化の原因にもなっています。
最近では、クエン酸に血圧を下げる働きがあることも分かってきました。
③ ガン・老化防止(活性酸素を撃退)
ガンや老化の原因を作っているのが、活性酸素の一つである過酸化水素です。
梅干しを見たとき、食べたときに出るツバには、グルタチオンペルオキシダーゼとカタラーゼなどの酵素が含まれています。
これらの酵素は、発ガン性物質の毒素を消す働きがあります。
また、カタラーゼには、過酸化水素を水と分子状酸素に分解して毒素を消す作用がありますので老化も抑制してくれます。
④ 頑固な便秘を解消
胃腸での消化・吸収がスムーズに行われなくなると便秘になります。
便秘になるとニキビ、吹き出物など肌のトラブルなどが起こるだけでなく、肩こりや体調不良の原因にもつながります。
梅干しを毎日食べると、胃腸の働きが活発になり、便秘が自然に解消されていきます。
⑤ 梅干しはアルカリ性食品の王様
梅干しはすっぱいので酸性食品と思われがちですがアルカリ性食品なのです。
肉や米、パンなどが酸性食品です。
反対に梅干しをはじめ、野菜や果物などはアルカリ性食品です。
健康被害の原因の一つといわれている血液の酸性化は、梅干しに含まれる有機物が、
酸性の食品に含まれている酸化物を減少させてくれます。
そして血液をアルカリ性に保ってくれます。
人間の血液は弱アルカリ性が一番健康的なのです。
⑥ 二日酔い解消にスーパーパワー
二日酔いは、肝臓のアルコール処理能力が追いつかず、血液中の酸素が不足するために起こります。
梅干しには胃腸の粘膜を保護する働きがあります。
アルコールは胃腸から吸収されるので、お酒を飲む前に梅干しを食べておくと
胃腸を保護する粘液の分泌を高めることができます。
そのためアルコールの刺激を緩和させることができます。
また飲み過ぎて二日酔いになってしまった場合も、梅干しを食べると、荒れた胃の粘膜の修復が早くなります。
⑦ カルシウムの吸収を助ける
海草・牛乳・小魚などカルシウムを含んでいる食べ物はたくさんあるのですが、
カルシウムはそのままでは体内に吸収されにくいという性質があります。
しかし、梅干しに含まれているクエン酸と結びつくことでカルシウムが吸収されやすくなります。
⑧ 食中毒を防ぐ防腐作用
冷蔵・冷凍などの保存技術が発達している今でも、細菌性の食中毒にかかる人は少なくありません。
数年前から社会問題になっているO-157をはじめとしたサルモネラ菌、黄色ブドウ球菌などの食中毒を起こす細菌は、
味やにおいなどがほとんどなく、細菌の有無が判断できません。
梅干しに含まれているクエン酸には、こうした細菌の増殖を抑制する働きがあります。
つまり、おにぎり、お弁当などに梅干しを入れることで腐敗細菌や食中毒細菌の増殖を抑えて、
腐敗を遅らせることができます。
5.まとめ
皆さん知ってますか?
青梅5㎏からおよそ100gの梅肉エキスが作られます。
最後に、その梅肉エキスの作り方についてご紹介しましょう。
疲労回復・食あたりなど万能薬として重宝しますのでお試しを。
【材料・用意するもの】
- 青梅(若くて青く硬いもの) ・おろし器(陶器製かセラミック製) ・ボール(ガラス製かホーロー製)
- もめんの布 ・鍋(土鍋かホーロー製) ・木じゃくし ・殺菌した保存容器
【作り方】
- 青梅は、丁寧に水で洗い、水気を充分に切っておく。
- おろし器で、青梅の果肉を皮付きのまますりおろす。
- もめんの布に、すりおろした果肉を入れ、汁をしぼる。
- 最初は弱めの中火にかけ、全体が温まってきたら弱火にして、加熱する。
- 黄色いアクを、丁寧にすくいとり、時々、木じゃくしで混ぜながら弱火でじっくり煮詰める。
- 表面に光沢が生まれ、黒くトロリとして、木じゃくしでスジがひけるようになったら火を止める。
- あら熱がとれたら、保存容器に入れる。
- 常温で長期間保存できる。
皆さん、梅干しは夏の暑い日の塩分補給にも優れた食品です。
水分補給に加えて、梅干しもしっかり汗をかいたときには忘れずに一口食べて、今年の夏の熱中症予防に役立ててくださいね。
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