第26回 夏のスタミナはウナギで (H22.7.25)

いよいよ、夏の暑さも本番です。
この様子だと、今年の8月も暑くなりそうですよ。
熱中症にならないように気をつけて、しっかりスタミナをつけてこの夏を乗り切りましょう。

明日は「土用の丑」の日。
今回は、そんな暑さを乗り切るためのスタミナ食で、健康効果に優れた「うなぎ」を取り上げました。
是非、一緒に勉強しましょう。

 

1.うなぎの産卵場所って知ってますか?
川や湖にいるはずのうなぎが、遠く離れた太平洋で生まれているそうです。
そう言えば、うなぎの卵なんて、見たことがありませんよね。
うなぎの生態は、まだほとんど分かっていなくて、謎の多い魚なんだそうです。
東京大学海洋研究所の塚本勝己教授の話によると、
日本にいるうなぎの故郷は、日本から南へ2,000㎞離れたマリアナ諸島付近なんだそうです。
そこで生まれたうなぎの赤ちゃん「レプトケファルス」は、海流に流され、約6ヶ月もかけて、
日本、中国、台湾の沿岸までやって来るのです。
レプトケファルスの調査から、うなぎはマリアナ諸島付近で産卵しているらしいということは分かりましたが、
正確な産卵場所、移動する深さなど、まだ特定できていないのが現状だそうです。
では、私達が日頃食べている養殖物は、どうなっているのでしょう?
実は、これも卵から育てているのではなく、マリアナ諸島から流されてきた稚魚を
捕獲、育てて出荷する方法をとっています。
現在のところ、その方法しかないのだそうです。
現在の日本のうなぎの消費量は、年間約15万6000トンで世界一。
9割以上が天然のシラスうなぎを海から採取して国内外で育てた養殖物で、
価格はシラスうなぎの漁獲量に依存すると言われています。
川や湖で約10年。成長したうなぎは産卵の為、太平洋の故郷まで旅をします。
そこに、うなぎのパワーの秘密が隠されているのかもしれません。

 

2.暑い夏場にうなぎを食べる風習はいつごろから?
「土用の丑」と言えば、うなぎ。暑い夏を乗り切るスタミナをつけるために、うなぎを食べるとされていますが、
そもそもの起源をご存じでしょうか?
夏の土用の丑の日にうなぎを食べる風習は、江戸時代からだと言われています。
諸説ありますが、エレキテルで有名な平賀源内が発案者のようです。
「暑い夏の日に、うなぎが売れなくて困ってるよ」と知人のうなぎ屋に相談された蘭学者、平賀源内(1728~1780年)が、
「丑の日に『う』の字がつく物を食べると夏負けしない」という民間伝承にヒントを得て、
「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めたそうです。
すると、そのうなぎ屋は「源内の言うことなら」と店先にその紙を貼り出したところ、
大繁盛して、他のうなぎ屋もまねたため、この習慣が定着して現在に至ったそうです。

【東洋医学コーナー】 ~「土用の丑」って何?~ 
そもそも「土用」とは、どうやら古代中国の自然哲学である五行思想
(この世の全てのものは木・火・土・金・水の5種類の物質から成る)をベースにした考え方からきているようです。
東洋医学もこれが基本になっています。
すなわち、春は木、夏は火、秋は金、冬は水と季節にそれぞれ4つの物質を当てはめたのですが、
そうすると「土」が余ってしまう。
そこで、「土」というのは季節の変わり目のことと定義されたわけです。
ということで、土用というのは夏に限らず、季節の変わり目全般を指し、
立春・立夏・立秋・立冬の前約18日間を指しているのだそうです。
今年の立秋は8月7日です。そこからさかのぼると、今夏の土用の入りは7月20日となります。
健康の面から見ると、土用の前後というのは、すべて危険な日と考えられていました。
その理由というのは、18日ある土用の期間中は、四季それぞれの健康の守り神が不在となるため、
思わぬ事故や災いが発生しやすくなるという捉え方からきているのだそうです。
次に「丑」ですが、十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)の2番目に数えられる丑のことです。
現在、「毎年の干支(えと)」ぐらいにしか見かけなくなりましたが、
昔は一日ごと、それから時間にも適用され使われていました。
というわけで、土用の丑の日というのは、季節の変わり目である18日間にある、丑という日なのです。
ちなみに、土用が18日間であるのに対し、十二支は12個しかありません。
そのため、この18日間の間に「丑の日」が2回登場することもあり、
夏の土用の丑の日は、年によっては1日だけではないこともあるのです。

 

3.うなぎの効能~9つのポイント
うなぎは、動物性のビタミンAである「レチノール」が豊富に含まれているので有名です。
それ以外にも、ビタミンB1やビタミンE、そして今話題のDHAやEPAなども豊富に含まれます。
そんなうなぎの効能について以下にまとめます。

  1. 皮膚や粘膜を正常に保つ → 鼓膜強化や肌荒れの予防 
  2. 目の働きを強める → 夜盲症や疲れ目の改善
  3. 髪や爪を正常に保つ → 脱毛や爪割れの予防 
  4. 呼吸器系の感染症への抵抗力をつける → 夏風邪の予防
  5. 生殖機能を維持する → 精力の増進
  6. 疲労を回復させ、成長を促進する → 夏ばての予防
  7. 活性酸素を除去してガンの発生を抑える 
  8. 記憶力や学習能力を高める
  9. その他、貧血や低血圧、そして冷え性などの改善

【注意点】
厚生労働省が定めているビタミンAの一日の上限値は、成人男女と妊婦は5,000IUです。
長期的に過剰摂取した場合、脱毛・頭痛・めまい・吐き気・嘔吐・皮膚の乾燥や
かゆみ・食欲不振などを起こすことがあります。
特に、妊娠初期に1日10,000IU以上のビタミンAを摂取すると、
赤ちゃんの先天性異常の危険性が高まると言われています。
ちなみに、うなぎのかば焼きのビタミンA含有量は、100gあたり5,000IUです。
通常の食事でビタミンAの過剰摂取になることはまずありませんが、
サプリメントでは簡単に摂取できてしまうので、注意が必要です。

 

4.まとめ
暑さでぐったりして、食欲のわかない時に、タンパク質や脂肪、ビタミンAやB1、B2、D、カルシウムなどを
たっぷり含む「土用うなぎ」を食べるという習慣は、実に科学的な生活の知恵だと言われています。
なんと、元禄八年(1695年)に書かれた『本朝食鑑』と呼ばれる薬膳書には、
「疲れを除き、腰や膝を温めて、精力を盛んにする」と、うなぎの効能を記しています。
昔から健康効果に優れているこのうなぎ。
この夏の健康維持に是非お試しくださいね。

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