第27回 夏場の脳梗塞にご用心 (H22.8.22)
8月も後半に入りましたが、まだまだ暑い日が続いています。
皆さん、お変わりありませんか?
今年の暑さは10月まで続くとも言われています。
くれぐれも熱中症には気をつけて、こまめに水分を取ってくださいね。
さて、今回はそんな夏場に多く発生する「脳梗塞」について、皆さんと一緒に勉強したいと思います。
1.脳梗塞ってどんな病気?
脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などの脳卒中は、がんや心臓病に次いで、
日本人の死因の第3位を占める重要な疾患です。
中でも脳梗塞は、全体の6割以上を占め、60歳以上に多く、生活習慣病との関連も深いと言われています。
脳梗塞は脳に栄養を送っている血管が、血液の塊(血栓(けっせん))などで狭くなったり、
つまったりして血液の流れが悪くなり、酸素や栄養素が欠乏し、最終的に脳細胞が死んでしまう病気です。
これを次の3つのタイプに分類します。
① ラクナ脳梗塞
脳内の比較的細い血管がつまって起こる、直径15㎜以下の小さい範囲の脳梗塞です。
高血圧が基礎となっているもので、我が国ではこのタイプが最も多いと言われています。
脳のあちこちに多発すると、認知症を引き起こすと言われています。
② アテローム血栓性脳梗塞
脳内の比較的太い血管が動脈硬化によってつまって起こる脳梗塞です。
このタイプは、コレステロールの高い人、つまり脂質異常症が動脈硬化を助長させて起こります。
③ 心原性脳塞栓症
心臓や首の動脈にできた血栓がはがれて脳の血管につまって起こる脳梗塞です。
このタイプは、高齢者になるほど多くなります。
不整脈、中でも心房細動(心臓が不規則なリズムで拍動を繰り返すもの)、リウマチ性心臓病、
心筋梗塞などがあると、心臓内の血液が停滞して、血栓ができやすくなります。
【東洋医学コーナー】
東洋医学では、脳卒中のことを「中風(ちゅうふう)」と呼んでいます。
脳卒中は急に発症し、変化も速く、外邪の中の「風邪」の特性に似ていることから中風と名付けられたそうです。
「中」は「あたる」という意味があります。「風」は風邪を表しますので、中風は風邪にあたる病という意味です。
また、「卒」は「突然」という意味がありますので、卒中は突然にあたる病という意味になります。
ちなみに「中毒」とは、名前の通り毒にあたるという意味です。
2.なぜ夏場に多く発生するの?
脳梗塞が夏場に多い理由としては、発汗による脱水での体内の水分不足があげられます。
そのため、血液中の水分量も減少し、血液がどろどろとなり、血流が悪くなって、
血液の塊(血栓)ができて脳の血管につまって起こってくるのです。
夏場に発生する脳梗塞全体の40%ぐらいが夜間に発生します。
これは、就寝中の発汗により脱水が起こりやすくなることに加え、
夜間に血圧が下がりやすいことなどが関係して血液が固まりやすくなるためです。
また、脳梗塞は起床時にも発病することが多いと言われています。
そのため、朝起きた時に何らかの症状が出現したという時には、特に注意が必要です。
朝に多い理由は、起床時は交感神経が緊張するため、血管が収縮して急激に血圧が上がり、
夜中にできた血栓が脳内でつまりやすくなるためと言われています。
3.どんな人が脳梗塞になりやすいの?
① 高血圧
これは脳梗塞の最も重要な危険因子で、高血圧になると脳梗塞の発症率は4倍にもなると言われ、
最高血圧の上昇とともに、脳梗塞発症率が増加します。
最高血圧を10㎜Hg、最低血圧を5~6㎜Hg低下させると、脳梗塞を含めた脳血管障害の発症を
約40%低下させることができると言われています。
高血圧の基準は、最高血圧140㎜Hg以上、または最低血圧90㎜Hg以上です。
② 糖尿病
脳梗塞発症の危険率がおよそ2~3倍になります。口の乾き、水分摂取の過剰、多尿などの症状があり、
それに著しい高血糖(食後2時間後200㎎/dl以上、空腹時126㎎/dl以上)が証明されれば糖尿病と言われます。
また、HbA1cが6.5%以上も糖尿病です。
③ 脂質異常症
血液中のコレステロールなどの脂質は、動脈硬化を促進させ、脳梗塞発症を助長します。
LDL(悪玉)コレステロール値が140㎎/dl以上、HDL(善玉)コレステロール値が40㎎/dl未満、
中性脂肪値が150㎎/dl以上を脂質異常症と言います。
④ 心臓病
特に心房細動がある人の心原性脳塞栓症の年間脳梗塞発症率は約5%で、それのない人の約6倍です。
心房細動とは、脈拍の間隔がバラバラになる不整脈のことです。
ご高齢の方で、治療を要する不整脈の中で最もよく見られるものです。
加齢とともに増加し、70歳代で5~6%、80歳代で8~10%の頻度で心房細動が見つかると言われています。
⑤ 喫 煙
男性におけるラクナ梗塞の重要な危険因子で、その危険度は喫煙していない人の2.2倍と報告されています。
⑥ 飲 酒
少量であれば適度に血液の流れがよくなるため脳梗塞発症を抑える効果があると言われています。
逆に、多量の飲酒は脳梗塞発症の危険性を増大させると考えられており、
量はビールで1本、日本酒で1合、赤ワインは1/2ボトル以内が適量と言われています。
⑦ 普段あまり水分を取らない人
夏場に水分をあまり取らないと、尿の色が濃くなったり、一日の排尿回数が減ってきたり、
便秘になったり、体調不良を訴えるようになります。
上記の①~④の病を抱えている人が夏場に水分を取らないでいると、
一過性脳虚血発作を引き起こす危険性が高まります。
これは脳梗塞の前に起こる現象です。
具体的にはあとで説明します。
4.脳梗塞にならないためにはどうすればいいの? ~ 7つのポイント
脳梗塞を発症すると何らかの後遺症を残すことが多く、
また、再発率も高いので、脳梗塞にならないようにすることが第一です。
特に、現在社会問題となっている認知症とも密接な関連を持ってくると言われています。
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病などの治療 → 自分の病気をしっかり管理!
- 禁煙 → 脳梗塞のリスクを下げる!
- 適度な飲酒と運動 → 血液の流れをスムーズに!
- 充分な水分摂取 → 特に夏場は就寝前と起床時には必ず!
- 野菜や果物の十分な摂取 → ビタミンCによる動脈硬化予防!
- 納豆、背の青い魚、梅干し、レモンなどの摂取 → 血栓を溶かし、血液をさらさらに!
- イライラしたり、怒りっぽくなったりしない → 血圧を上昇させないライフスタイルを!
5.脳梗塞の前ぶれチェックリスト
今まで何ともなかったのに、急に次のような症状が出たらすぐに病院へ行きましょう。
- 手の力が急に抜け、持っていた箸やペンなどをポロリと落とす。
- 片側の手足がしびれる。
- めまいがして、まっすぐ歩けない。
- 力はあるのに立ち上がれない、あるいは歩けない。
- ろれつがまわらない。
- 相手の言うことがよく理解できない。
- 思うように文字が書けない。
- 物が二重に見える。
- 片方の目にカーテンがかかったようになり、一時的に物が見えなくなる。
これらは一過性脳虚血発作と言われる症状で、脳梗塞の前触れと言われています。
どの症状も数分から1時間以内、長くとも1日以内で消えてしまいます。
そのため、「あれは何だったのだろう?」と不思議に思う程度で、放置しておくケースが多いのです。
しかし、このような症状が出たら、その後に脳梗塞の大発作が起こる可能性がありますので、
すぐに病院へ行くことをお勧めします。
6.まとめ
脳梗塞は突然に起こる病気です。かかってから「しまった」と思っても手遅れなので、
普段から予防しておくことが大切です。
最後に、日本脳卒中協会が作成した「脳卒中予防十か条」を紹介します。
皆さんのライフスタイルに役立ててくださいね。
「手始めに、高血圧から治しましょう」
「糖尿病、放っておいたら悔い残る」
「不整脈、見つかり次第すぐ受診」
「予防には、タバコを止める意思を持て」
「アルコール、控えめは薬、過ぎれば毒」
「高すぎる、コレステロールも見逃すな」
「お食事の、塩分、脂肪も控えめに」
「体力に、合った運動続けよう」
「万病の、引き金になる太りすぎ」
「脳卒中、起きたらすぐに病院へ」
残暑とはいえ、まだまだ暑い夏は続きます。
水分をしっかり補給して脳をすっきりさせながら快適な毎日の生活を送ってくださいね。
前のページへは、ブラウザの戻るボタンでお戻りください。