第29回 気になるめまい (H22.10.24)
いつの間にか秋雨前線も遠ざかり、秋の深まりを感じさせる今日この頃ですが、皆さんお変わりありませんか?
この時期から、急速に肌寒さを感じるようになると同時に、血液の流れが悪くなり始めます。そして、肩こりや腰痛を訴える人が増えてきます。くれぐれも冷たい飲食は遠ざけて、下半身を温めるライフスタイルに心がけてくださいね。
さて、今回は「めまい」について皆さんと一緒に勉強したいと思います。
1.めまいって何だろう?
めまいとは、自分を中心に目が回るような、頭がふらつくような、急に目の前が真っ暗になって気が遠くなるような、そんな感覚の総称です。人によってその原因は様々で、その感じ方も異なっています。
ここで、少し耳の構造について簡単に説明します。
耳は外耳(がいじ)、中耳(ちゅうじ)、内耳(ないじ)に分けられます。
外耳は、耳の入り口から鼓膜までで、音を集めて鼓膜に伝えます。中耳は、鼓膜の奥の空洞で、音を増強します。内耳は、中耳の奥の骨の壁の中にある感覚器で、聴覚を担当する蝸牛(かぎゅう)と、平衡感覚を担当する前庭(ぜんてい)・半規管(はんきかん)からできています。内耳からの情報は、内耳神経によって脳へ伝えられます。
次に、めまいのタイプを4つに分けて説明します。
① 回転性めまい
自分の身体を中心に、天井や大地がぐるぐると回転しているような感覚を訴えます。激しい吐き気を感じることもあり、身体のバランスを失って倒れることもあります。多くは耳の奥の内耳の障害で生じます。
主な原因として、脳の循環障害やメニエール病、そして加齢などがあります。
② 動揺性めまい
身体がぐらぐら揺れているような感じや、足下がふらつく、まっすぐに立っていられないなどが特徴です。
主な原因として、脳の循環障害や薬物の副作用(結核の治療薬であるストレプトマイシンやカナマイシンが有名)などがあります。
③ 浮動性めまい
雲の上を歩いているような、ふわふわとしためまいが特徴です。回転性のめまいは起きません。
主な原因として、脳の循環障害や自律神経失調症、高血圧や疲労、睡眠不足などがあります。
④ 立ちくらみ(失神)
血の気が引き、意識が遠くなるような感覚です。急に立ち上がった時などに見られ、実際に気を失うこともあります。
主な原因として、脳の循環障害や起立性低血圧(小・中学生に多い)などがあります。
【東洋医学コーナー】
東洋医学では、めまいのことを「眩暈(げんうん)」とか、「頭暈(とううん)」などと呼んでいます。「眩」は目がかすみ、目の前が暗くなることで、「暈」はぐるぐる物が回ってみえたり、物が揺れ動いて見えることを意味します。
東洋医学的にめまいの原因を見てみると、精神的ストレスによるもの、老化現象で起こるもの、生まれつき消化器の働きが弱いもの、暴飲暴食により胃腸の働きが弱って起こるものなどがあります。
2.メニエール病ってどんな病気?
ここでは、めまいの中でよく耳にする「メニエール病」について取り上げます。
フランスの内科医師、プロスパー・メニエールが、めまいが内耳から起こることを初めて提唱しました。それにちなんで、内耳性めまいの中で、あるタイプのものを「メニエール病」と呼ぶようになりました。
30歳~50歳の女性に多く見られ、日本でのメニエール病の有病率は10万人に30~40人と言われています。通院や薬の投与などで一度で治る人もいますが、そのほとんどが症状が治まっても、また同じような症状を繰り返すと言われています。
次に、メニエール病の特徴的な症状をまとめます。
① 回転性めまい
発作的に起こるもので、天井や大地が自分を中心にぐるぐると回るようなめまいです。めまいの発作は、軽いもので数分から数時間、重いものになると2~3日続くこともあります。このめまいにより、吐き気や嘔吐を繰り返す場合があります。
② 難聴
聴力の低下、あるいは耳の中がつまった感覚を覚えます。例えば、エレベーターの中で急に耳がつまって、急に耳の聞こえが悪くなったりするような感じです。
③ 耳鳴り
人によってキーンという高い金属音や、ゴーという低音が耳の中で鳴っている感じがします。
3.メニエール病の予防法
(1) 日常生活上の留意点 ~ 10のポイント
① 食事について
メニエール病は、内耳の中から古いリンパ液が流れ出て行かずに、むくんでしまっているような状態です。塩分を取り過ぎるとメニエール病の発作を誘発する危険性があるとの報告もあり、治療の一つとして、水分と塩分を制限する方法があります。
② 睡眠について
メニエール病の人にとって、睡眠不足はめまいの発作が起こる誘因の一つです。大切なことは睡眠不足を慢性化させないことです。
③ 仕事について
メニエール病の発作は突然起こりますから、発作が起こるとすべての仕事を中断して休まねばなりません。メニエール病の人は、几帳面な方が多いので、他人に迷惑をかけると、そのことを大変苦にします。そうすると、まためまいが起こりやすくなります。勤め先や、同居している人たちに、この病気の実態をよく知ってもらうことが大切です。
④ 運動について
適度な運動は、健康保持のためにも重要です。運動は継続することが大切です。毎朝のラジオ体操や、ウォーキングなどで、気持ちよい汗を流すようなライフスタイルを心がけましょう。
⑤ 趣味について
趣味を持つことはストレスの解消になります。音楽を聴く、楽器を演奏する、スポーツを観戦したり、実際にしたり、楽しければよいのです。ただし、編み物のような細かい手作業、読書、パソコンなどは長時間続けると、肩がこってふらつく感じが起こったりすることがあります。
⑥ 旅行について
旅行は、気分転換やストレス解消のためにも最適です。パック旅行など、時間に追われて移動するような日程は避けて、ゆとりを持ったスケジュールで旅行を楽しむようにしましょう。
移動の際の乗り物に注意が必要なことがあります。もし、強いめまい発作が起こって日が浅い時期には、めまいの兆候が残っていて、列車やバスに揺られると、めまいを誘発することがあります。また、飛行機は比較的揺れが少なくて良いのですが、気圧の変化がメニエール病の発作の誘発に影響を与える場合もあります。
⑦ コーヒーについて
コーヒーに含まれるカフェインは、身体にいろいろな良い効果を及ぼしますが、飲み過ぎると、興奮したり、夜中にトイレに起きるようになり、睡眠に障害をきたすようになります。
⑧ アルコールについて
メニエール病の人にとって、アルコールはいけないということはありません。適度の飲酒がストレスを処理するのに有効であれば、発症の予防になると思います。
⑨ タバコについて
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させ、血液の循環を悪くし、めまいを起こしやすい状況をつくります。できるだけ本数を減らすか、禁煙することが望ましいと思います。
⑩ ストレスについて
メニエール病はストレス病の一つですので、ストレスの影響を受けやすい神経が細やかな人に多いようです。メニエール病の発作を予防するには、このストレスとうまくつき合っていくことが大切です。
(2) めまいの発作が起こったら ~ 3つのポイント
① 自分も周りの人もあわてない
めまいは、いつどこで起こるか分かりません。メニエール病は、耳鳴りや耳の塞がったような感じ、軽いふらふら感、頭痛などのような前兆があることもあります。前兆は、その人によって違いますが、今までの経験から、自分自身の前兆を自覚している人もいます。そのような前兆を感じたら、外出せず、自宅で過ごすようにしましょう。
もしも外出先でめまい発作が起こったら、周りの人に協力してもらい、休める場所に連れて行ってもらいましょう。自分はもちろん、周囲の人もあわててはいけません。周囲の人に、それがメニエール病の発作であり、心配する必要はないことを伝えてください。
また、この発作はめまいの程度が激しく、飲食物を吐いても生命に関わるようなめまいではないことや、数時間の安静でおさまることを伝えてください。あわてて、救急車を呼ぼうとしたら待ってもらって下さい。めまいが起こっている時は、救急車に揺られて病院に行くだけでも大変ですし、病院に行っても、すぐに診察してもらえるとは限りませんから、苦痛を増すだけです。
② 楽な姿勢を取り、静かな環境にする
めまいが起こったら、まず横になりましょう。眼は開けているより、閉じている方が楽です。メニエール病のめまいの多くは、難聴のある方の耳を上にして寝ている方が楽だとされていますが、どちらを上にしても結構です。ご自身が楽であれば仰向けでも構いません。
大きな物音は、メニエール病の人にとって大変耳障りです。また、落ち着いてきためまいを増悪させる危険性があります。できるだけ、静かな環境で休みましょう。動いているものを見ると気持ちが悪くなるので、テレビは消しておき、なるべく、人の出入りも控えてもらいましょう。
強いめまいの時は、自分で歩くことは無理なので、トイレなどに行く時には、付き添ってもらうようにしましょう。食事は、無理して取る必要はありません。メニエール病以外に病気がなければ、吐き気がおさまるまで水分だけにして、食事をしない方が楽でしょう。また、嘔吐するといけないので、枕元に洗面器を置いておくとよいでしょう。
③ 掛かり付け医
メニエール病であれば数時間以内に激しいめまいは落ち着きます。しかし、めまいが強く、吐き続けているとか、めまいの発作がいつもより長引いているようであれば、掛かり付けの近所の医師に往診を依頼するのも一つの方法です。そのためにも、近所に掛かり付けの医者をつくっておきましょう。
4.まとめ
一般的にめまいの予防法を5つにまとめると次のようになります。
- 睡眠不足にならない。
- 適度な運動や趣味を持つ。
- 適度のアルコールをたしなむ。
- 問題があった時に、くよくよしないで考え方を切り変える。
- 緊張しないでどこでもリラックスするようにする。
これから寒さが増してくる季節です。皆さん、部屋の中では「靴下」をしっかり履いて、足元を温めるライフスタイルに心がけて、快適な生活を送ってくださいね。
前のページへは、ブラウザの戻るボタンでお戻りください。