第38回 最近増えているお年寄りの目の病気 (H23.11.27)
ここのところ、暖かい日が続いていますが、皆さんお変わりありませんか?
今年の冬は、寒くなると言ってます。私は、ストーブが壊れたので、新しくガスファンヒーターを買おうかなと思っていろいろと調べているところです。何でもそうですが、買い物は買うまでが楽しいですね。
さて、今回は「お年寄りに増えている目の病気」について、皆さんと一緒に勉強したいと思います。
1.「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」という病気を知ってますか?
年齢を重ねると、身体のいろいろなところで病気が出てくることがあります。
加齢黄斑変性もその一つで、加齢により目の奥にある網膜の中心部にある黄斑と呼ばれる所に障害が生じ、主に見ようとする所が見えにくくなる病気です。
加齢黄斑変性は、我が国ではなじみの薄い病名かもしれませんが、欧米では成人の失明原因の第1位になっており、珍しくない病気です。
我が国では、比較的少ない病気だと考えられていましたが、社会の高齢化と生活の欧米化により、近年著しく増加しており、失明原因の第4位となっています。
50歳以上の人の約1%に見られ、高齢になるほど、その割合は増えていきます。
比較的、最近まで治療法がなかったのですが、最近、いくつかの治療法が新たに開発されて、早く見つければ、ある程度の視力が維持できるようになってきました。
2.加齢黄斑変性の分類は?
加齢黄斑変性には、「萎縮型(いしゅくがた)」と、症状がより深刻な「滲出型(しんしゅつがた)」の2つがあります。
① 萎縮型の加齢黄斑変性
萎縮型の加齢黄斑変性は、よりおとなしい加齢黄斑変性で、日本では全症例のおよそ20%がこのタイプです。
萎縮型は進行も緩やかで、中心が侵されない限り、通常著しい視力の低下は見られません。
② 滲出型の加齢黄斑変性
滲出型の加齢黄斑変性を発症する割合は、日本では加齢黄斑変性全体の約80%であり、萎縮型に比べ高度な視力低下に至るリスクがより大きくなっています。
滲出型の加齢黄斑変性では、黄斑が急激に破壊され、視野中心の視力が急速に失われる可能性があります。
病状の悪化は萎縮型よりも速く、視力低下や物がゆがんで見えたり、部分的視野欠損などの症状が進行していきます。
そして、最後には高度の視力障害(矯正視力0.1以下)を来してしまうのです。
3.どのような原因で起こるの?
現在、日本の中途失明原因になる病気の1位と2位は、糖尿病網膜症と緑内障ですが、最近加齢黄斑変性の患者が急増しており、それが注目されています。
年齢的にはほとんど50歳以上で、男性が女性の約3倍です。最近では、75歳以上のご高齢の方に多発する傾向が見られるようになってきました。
片眼に発症した人でも、40%は両眼性になってきます。
もともと、この病気は欧米の白人に多く、色素の多い日本人など、有色人種には少ないと言われてきました。
しかし、最近の日本におけるこの病気の急増は、「人口の高齢化」や「食生活の欧米化」の他に、「自然界の紫外線の増加」、「テレビやパソコンの普及」などで光刺激を日本人が受けることが多くなったことなども原因の一つと考えられます。
この点で、幼児期からテレビとテレビゲームやパソコンで多量の光刺激を受けている今の若者の将来の目の健康が大変心配されます。
4.どのような症状があるの?
① 視力低下
中心視力の低下が起こってきます。
これは、萎縮型の場合には徐々に起こりますが、滲出型の場合には、突然視力が下がることがあります。
② 中心が見えにくくなる。
中心暗点と言われるもので、読書や車の運転などが困難になってきます。
③ 物がゆがんで見える。
変視症(へんししょう)と言われるもので、障子の桟や窓枠などが波のようにゆがんで見えることがあります。
一般に、初期症状として現れることが多い症状です。
5.自宅でできる簡単なチェック
診断には、眼科医で検査を受けることが必要です。
そこで、眼科に行く前に、自宅で簡単なチェックをしてみましょう。
別添資料の「アムスラーチャート」を約30㎝離して、メガネをかけている人も、そのままはずさないで、片目を閉じて、表の中央の黒い点を見つめてください。
左右の目で、片目ずつ見てください。両目で見ないでください。
何か違和感があったり、変な見え方がしたら眼科医に相談しましょう。以下の項目を参考にしてください。
(1) 変な見え方の例
- 線がぼやけて薄暗く見える
- 部分的に欠けて見える
- 中心がゆがんで見える
(2) 日常生活で次のような見え方がありますか?
- 新聞の文字が読みづらい
- 囲碁や将棋の盤の目がゆがんで見える
- テレビや映画が見えにくい
- 顔を横にして斜め目線でものを見る
- 料理や裁縫をしている時に、手元がはっきり見えない
- 自動車の運転中に、白線がゆがんだり、標識がはっきり見えない
- 電話帳や薬の説明書など細かい文字が読みづらい
- 足下の段差がはっきり見えない
- 料理のコントラストがはっきりしない
- 話し相手の表情が確認しづらい
6.加齢黄斑変性と診断されたらどうすればいいの?
加齢黄斑変性と診断された場合、レーザーを用いた治療法などがあります。
それ以外でも、日常の生活習慣を少し変えることにより、ある程度進行を抑えることができると言われています。
以下のことを実行してみてください。
① 「亜鉛」や「ルテイン」などが含有された総合ビタミン剤を取りましょう
亜鉛やルテイン、そしてある種のビタミン類(ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチンなど)などは、網膜にとって重要な栄養素です。
亜鉛の血中濃度の低下と加齢黄斑変性の関連が指摘されています。
加齢に伴って、亜鉛が含まれている食品(穀類、貝類、根菜類など)の摂取量が少なくなるとともに、腸の亜鉛を吸収する力が低下してしまうことから、亜鉛不足になりやすいと言われます。
これらのサプリメントを飲むと、加齢黄斑変性の発症が少なくなることが分かっています。
しかし、完全に抑えることはできません。
② 食事では、ニンジンやホウレン草、キャベツなどの緑黄色野菜を多く摂りましょう
緑黄色野菜は、サプリメントと同様に加齢黄斑変性の発症を抑えると考えられています。
カロチノイド(ビタミンAの基になる物質)の摂取量が少ないと、発症しやすいと言う研究報告もあります。
なるべく、カロチノイドを多く含んでいるニンジンやホウレン草などの緑黄色野菜を摂取するようにしましょう。
また、肉中心の食事より、魚中心の食事の方がよいようです。全身の健康を維持するためにも、バランスの取れた食事を心がけましょう。
③ 光線が強い戸外に長時間いる場合は、紫外線防止のためにサングラスなどをかけましょう
紫外線は、網膜の色素細胞に障害をもたらすと考えられます。
④ たばこをやめましょう
喫煙は、身体の循環を悪くするだけでなく、目のためにも良くないものの代表です。
喫煙している人は、していない人に比べて加齢黄斑変性になる危険性が高いことが分かっています。
喫煙している人には禁煙が勧められます。
⑤ 定期的な運動をしましょう
適度な運動は、身体のために良いばかりではなく、目のためにも重要です。
7.まとめ
最後に、紫外線が目に及ぼす影響について、少しまとめてみます。
紫外線の量は、晴れている日は100%ですが、曇りの日でも70~80%存在するそうです。
このように、紫外線の量は曇りの日でも以外と多いんです。
紫外線は、皮膚に当たると日焼けすることはよく知られていますが、同じように、目に当たると白目が黄色くなったり、体全身の疲労を増幅させたり、それどころか、なんと肌をくすませることもわかっています。
目に紫外線が当たると、目の表面にある角膜が炎症を起こし、脳から全身にストレスホルモンを分泌します。
すると、免疫力が低下して疲労がたまってしまいます。
紫外線による疲労から体を守るには、「紫外線カットのサングラス」や、「つばの広い(7㎝以上)帽子」がおすすめです。
あなたの大切な目が加齢黄斑変性にならないためにも、紫外線予防につながるライフスタイルを心がけてくださいね。
今月の初めに、また伊吹山に登ってきました。これで、今年になって3度目です。
今年になってから、私は必ず登山のときには紫外線防止のサングラスをかけて登るようにしています。おかげで、登山による疲れ方が、以前に比べて少なくなったように感じています。
皆さんも、おしゃれなサングラスをかけて、町の中を歩いてみてください。きっと、今までと違った世界が感じられますよ!
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