第39回 冬場に多い心臓突然死 (H23.12.25)
メリークリスマス! ようやく寒さ到来ですね。皆さん、風邪などひいてませんか?
私はビタミンCの豊富な柿を毎日食べながら、風邪対策をしています。でも、そろそろ柿もおしまいかな?
さて、今回は冬場に増える恐ろしい突然死の原因の中でも、特に多い急性心筋梗塞に焦点を当てながら、皆さんと一緒に勉強したいと思います。
1.突然死とは何だろう?
突然死とは、健康そうに見えていた人が、ある日突然急死してしまう”予期しない死“のことで、医学的には、「発症から24時間以内に死亡するもの」と定義されています。
原因としては、急性心筋梗塞、ひどい不整脈、その他の心筋の異常など、心臓病によるものが大半を占めますが、くも膜下出血などの脳血管疾患や、気管支喘息などの呼吸器疾患、そして原因不明によるものなどもあります。
突然死の中でも、心臓病が原因で起こるものを「心臓突然死」と言います。
発症から1時間以内という短時間のうちに亡くなることが多いため、「瞬間死」とも呼ばれています。日本では、毎日約100人が心臓突然死していると言われています。
2.心臓の働きは?
心臓は筋肉の塊で、人間の身体の血液を全身に巡らせるポンプの役目をしています。
人間は、血液がないと生きていけません。なぜなら、酸素を取り込めないからです。
どこに取り込むのかと言うと、それは脳や内臓、そして心臓の筋肉など、全身の細胞です。
人間は、体の組織全体に酸素を取り込まないと、生きていくことはできないのです。
ここで、重要なのは酸素です。
その酸素は、呼吸によって肺から取り込まれ、血液中に溶け込みますが、その血液を体全体に循環させる役目が心臓なんです。
【東洋医学コーナー】
東洋医学では、心臓のことを「心(しん)」と呼び、神を貯蔵していると考えています。
この神とは神様のことではなく、精神や意識状態を表すものとされています。
心が虚弱になると、精神状態や意識状態が弱々しくなって、夢を多く見たり、不眠が現れるとされています。
3.恐ろしい狭心症や心筋梗塞とはどんな病気?
心臓は、1日に約10万回も収縮・拡張を繰り返しています。
これによって、絶え間なく全身の細胞に血液を送り込んでいるのです。
心臓は、このように休まず運動し続けるために、酸素や栄養素が必要になってきます。
心臓の筋に、酸素や栄養素を含む血液を送り込んでいるのが、心臓の周りを巡っている「冠状動脈」と言う血管です。
この冠状動脈が、動脈硬化などの原因で急に狭くなると、心筋に送り込まれる血液量が不足して胸が痛くなります。
これが「狭心症」です。
また、冠状動脈が完全に塞がってしまって、心筋に血液が送られなくなった状態を「心筋梗塞」と呼び、その状態が持続すると、その部分の心筋の細胞が死んでしまいます。
すると、心臓の筋の収縮・拡張ができなくなるため、ポンプとしての働きをなさず、命に関わる危険な状態となります。
これが「心不全」です。
心臓の筋は、一度死んでしまうと、元の状態には戻りませんので、緊急の手術が必要となります。
心筋梗塞の好発年齢は、60~75歳で、その死亡率は30%~40%と言われていますが、死亡者の半数以上は病院到着前、あるいは発症から2時間以内に死亡しています。
4.狭心症と心筋梗塞の症状の違いは?
狭心症や心筋梗塞の発作では、胸の中央の胸骨(旨の真ん中にある縦長の骨)の奥あたりが痛み、針で刺されるような、あるいは手でぐっと心臓を締めつけられ、息ができないような苦しさを伴う、冷や汗がでるほどの激痛が走ります。
この痛みが背中や、あご、左の肩や腕に響くこともあります。
狭心症でも激痛ですが、心筋梗塞だとなおひどく、経験者の多くは「これは死ぬかも知れない」と深刻に感じた話をされます。
痛みが30分以上続くのが心筋梗塞で、数分から20分以内で自然に治まるようなら狭心症と考えると目安になります。
狭心症では、ニトログリセリンの舌下錠の効果が期待できますが、心筋梗塞では効果がありません。
ご高齢の方では、胸の痛みなどの症状ではなく、「息切れ」、「吐き気」などの症状が起こることがあります。また、糖尿病の方では痛みが無いこともあります。
これは、無痛性心筋梗塞と呼ばれ、心筋梗塞の約2~3割を占め、特にご高齢の方や糖尿病患者さんに多く見られます。
痛みが無いために、重症の心不全や不整脈が出るまで気づかない場合も少なくありません。
無痛性心筋梗塞を防ぐためには、定期的に健康診断を受け、心電図などによって心臓の健康状態をチェックしておくことが大切です。
そして、原因不明の吐き気やだるさ、しびれ、めまい、むかつきなどの違和感を感じた場合は、心臓病を疑って専門医の診察を受けるようにしましょう。
5.冬場の朝晩の8時は「魔の時間帯!」
心筋梗塞の発作は、朝起きて身体が少しずつ目覚め、活動し始める午前8~10時頃と、残業など仕事後20~22時頃の2つのピークが知られています。
朝方は女性やご高齢の方に多く、夜には比較的若い男性の飲酒・喫煙者に多い傾向が見受けられます。
季節としては、狭心症と同様、冬の寒い日に多い傾向があります。
心筋梗塞を疑わせる激しい胸痛が現れ、安静にしても症状が改善されない場合には、躊躇せず救急車を要請してください。
発作中は、できるだけ座った状態で救急車を待ちましょう。横になっていると、下半身の血液が心臓に戻り負担が大きくなります。
6.心臓突然死の危険度チェック
(1) 心筋梗塞になりやすい性格診断
次の10の質問に対して、あなたが選んだaの解答の数を数えてみてください。
- 待ち合わせの時は?
a.約束の時間前に着いている
b.ぎりぎりか、または遅刻する - 信号待ちの時は?
a.車用の信号も見る
b.自分の渡る信号しか見ない - パソコンを起動しているとき?
a.起動するまで、他のことをする
b.起動するまで、そのまま待つ - 買い物で並んでいるレジが進まなかったら?
a.他の列のレジに移動する
b.そのまま待つ - カラオケで歌う時は?
a.歌の終わりの演奏部分は、最後まで聞かない
b.演奏部分を最後まで聞く - 携帯電話に連絡が入る時は?
a.まめにチェックする
b.何回も着信に気づかないときがある - エスカレーターに乗った時は?
a.歩いて上がる
b.歩かずに、そのまま上がる - 駐車場を出る時は?
a.前もって、お金を用意する
b.出口に着いてから、お金を用意する - 休日の利用法は?
a.予定を必ず入れる
b.予定がないことが多い - 映画館で最後のエンディングの曲が流れたら?
a.最後まで見ずに、すぐ席を立つ
b.最後まで見てから席を立つ
☆ 解説
結論から言うと、aの様な「せっかちで短気な性格」は、Bの「のんびり屋で、おっとりタイプの性格」に比べて、心筋梗塞を起こす確率が、2.2倍に増えると言われています。
特に、aの数が7個以上の方は、赤信号です。
普段からリラックスした生活スタイルを心がけましょう。
(2) 心臓突然死の危険度チェック
心臓突然死を予防するためには、その原因となる心臓病を自分で予知するための努力をすることが最も大切です。
特に40歳以降の方は、定期検診を受けるだけでなく、下の項目のうち3つ以上当てはまれば、一度循環器専門医に相談することをお勧めします。
- 親兄弟、親族に突然死の人がいますか?
- 今までに、心臓病と診断されたことがありますか?
- 現在、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症のいずれかを持っていますか?
- 今までに、心電図で異常(不整脈など)を指摘されたことがありますか?
- 最近、失神や、めまい発作を起こしたことがありますか?
- 最近、動悸発作、息切れ、胸痛のいずれかを起こしたことがありますか?
- 最近、大きな精神的ストレス(近親者の死亡など)を経験しましたか?
- 最近、夜よく眠れませんか?
- 最近、過労などで、不規則な生活を過ごしていますか?
- 最近、暴飲暴食(喫煙やコーヒー、アルコールなど)をよくしますか?
7.まとめ
突然死が起こるのは、就寝中、入浴中、排便中など、家庭内がほとんどです。
危険度チェックで、該当する項目の多かった人は特に、日頃から以下の点に注意しながら、自分の生活習慣を見直しましょう。
- 禁煙を心がける。
- 塩分、糖分、脂肪分の取り過ぎに注意する。
- 適度な運動(毎日、適当な距離を歩くなど)の習慣をつける。
- 気分転換を図り、ストレスを避け、規則正しい生活を送る。
- 血縁者に心筋梗塞や狭心症の方がいれば、特に長年の悪い習慣を改める。
- 過度の疲労や緊張、暴飲暴食などを避ける。
- 夜更かしをせず、充分な睡眠を取るようにする。
- 熱い風呂や長湯は避け、トイレでは強くいきまないように心がける。
- お風呂場やトイレ、廊下などは、なるべく自分の部屋との温度差を少なくする。
- 冬場の外出は、なるべく午後からにする。
- 入浴は、寝る前に行い、身体が冷え切る前に布団に入るようにする。
心筋梗塞は生活習慣病です。「なってからどうしよう?」ではなく、「ならないようにどうすべきか?」が最も大切です。
普段の生活習慣を見直して、この寒い冬を安全に乗り切ってくださいね。
くれぐれも、心配な点がある方は、必ず主治医の先生に相談してくださいね。
健康講座を始めて、ちょうど4年が経過しました。長い間、皆さんにはおつき合いをいただき、本当にありがとうございます。
年明けには5年目に入ります。気持ちを改め、またがんばっていきますので、どうかよろしくお願いしますね。
来年が、皆様にとってよき年になりますよう、お祈りしています。
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