1.脳梗塞って

学習第1弾は「脳梗塞」の話。

私たちが施術する患者の多くが「脳卒中の後遺症による片麻痺」です。
じゃあ、まずは脳卒中って?

現在の日本は、世界有数の長寿国であるのはみなさんご存じに思います。
平成20年時点の平均授業は、男性79.29歳、女性86.05歳です。
これは、世界では、男性第3位、女性第1位となります。
ちなみに男性の1位はアイスランド79.6歳、2位はスイス79.4歳です。
少子高齢化の影響で、老年人口(65歳以上)が占める割合も高く、現在では超高齢社会となっています。
老年人口が14%を超えると、高齢社会と呼ばれ、21%を超えると超高齢社会と呼ばれます。
ちなみに平成20年での老年人口は22.1%で、世界第1位です。
また、2000年からwhoは、「健康で、人の手助けを借りないで生活できる寿命」を「健康寿命」と提唱しています。
平均寿命と健康寿命との差が、いわゆる寝たきりなどの不健康期間と呼ばれています。

現在、医療界では「リハビリ難民」が重要視されています。
リハビリ難民は、片麻痺などの治療も充分に受けられずに、退院されている患者たちのことです。
脳梗塞や脳出血などが起こると、急激に倒れ意識障害を呈し、片麻痺を合併したりします。いわゆる脳卒中の発生です。
昔は、脳出血が脳梗塞を上回っていましたが、今は逆転し脳梗塞が著しく増加しています。
そこで、今回は脳梗塞の勉強をします。
脳梗塞は、脳の血流障害が起こり、そのために脳の細胞が死んでしまった状態です。
梗塞とは、終動脈に血流障害が起こり、そのために分布領域の細胞が壊死した状態です。
因みに終動脈は、吻合を持たない動脈です。終動脈が障害されると梗塞が起こるのですから、「梗塞」と付く臓器は終動脈です。
具体的には、脳の他、心臓、肺、脾臓、腎臓などがあります。

さて、脳の話に戻ります。
脳の重さは体重の約2%ですが,心拍出量の15%が供給されます。
ちなみに安静時の筋:20%、肝臓:20~30%、腎臓:25%、心臓:5%です。

脳梗塞を起こす原因には、脳血栓と脳塞栓とがあります。
血流障害を起こす異物を栓子と言いますが、脳血栓では、脳の血管の中で血液がかたまり、
脳塞栓では、脳以外でできた異物が脳の血管で詰まります。
最近、よく聞く「エコノミー症候群」は、足でできたものが肺で詰まった状態です。

さて、まずは脳血栓についてです。
ある程度の速さで流れている血液がかたまる要因には3つあります。
① 血液性状の変化、つまりドロドロの血液です。
② 血流の変化、つまり、動脈瘤などによりうずができてしまっているなどです。
③ 血管壁の変化、つまり動脈硬化などで血液がひっかかりやすくなっている状態です。
これらの背景には、高血圧、糖尿病、脂質異常症(かつての高脂血症)などがあります。
以上の疾患からは、生活習慣病が思い浮かびます。
となると、好発年齢は壮年から高齢者となります。
また、血液が速く流れているよりゆっくりの方がかたまりやすいですよね。ですので、睡眠中や安静時に発生しやすいです。
また、いきなりかたまらず、徐々にかたまりますので、症状の発言は徐々に進行していきます。
意識障害もはじめは軽いです。進行すれば、片麻痺となります。

さて、次は脳塞栓です。
どこかでできた異物が流れてきて、どんどん細くなっていく血管の途中で栓をしてしまいます。この異物を塞栓と呼んでいます。
じゃあ、この塞栓はどこからくるのでしょう。
一番多いのは、心臓内で作られたものです。
その中でも溶連菌によるリウマチ熱から続発する心内膜炎や弁膜症が多いです。
他には、心臓が数百回収縮する心房細動、心筋梗塞などが挙げられます。
つまり、脳塞栓には基礎疾患があることを意味しています。
好発年齢は特にはありません。
塞栓が発生し、運悪く脳の血管で詰まれば発症しますので、日中いつでも起こります。
また、完成された塞栓がいきなり栓をしますので、症状の進行波速く、数分で梗塞の症状が完成します。
つまり片麻痺を起こします。

以上をまとめますと
原因 脳血栓:動脈硬化、脳塞栓:心臓疾患
年齢 脳血栓:壮年から高齢者、脳塞栓:関係なし
発症 脳血栓:睡眠中に徐々に起こり、脳塞栓:日中いつでも起こり急激に起こる
割合 7対3で脳血栓が多いなどです。

これらを踏まえると、患者自身が脳血栓か脳塞栓かが分かってなくても、患者の年齢を踏まえて、
発症の時間、症状の進行具合を尋ねることにより、私たちが脳血栓か脳塞栓かが予測できます。
それが分かれば、その背景にあるものが、動脈硬化か心臓疾患かが分かってきて、それらを尋ねることになります。
そして、基礎疾患に応じた生活指導が指示できると思います。
こちらから、基礎疾患を尋ねることで、まずは、患者からの信頼感を得られると思います。
第1弾は、この程度で。

【まめ知識】
動脈硬化等の原因で20年程前によく問題になっていましたが、通常、高齢になれば血圧が高くなる傾向にあり、
私達が在学当時には、下が90㎜Hg、上が140㎜Hgを超えると高血圧という指標があり、その程度で血圧降下剤が処方され、
本来、高齢になればある程度高くなければ血流状態を維持できず、降下剤が原因の脳梗塞が全体の3割はあると
問題になっていたことがあり、その後、処方基準も改善されています。
今後、脳出血が血流を良くするための薬剤で高リスクになったり、胃薬系の長期服用によるパーキンソン様症状の出現等、
介護現場の会話等に少なからず出てくる内容です。
そんな話があったな。程度にでも頭に残しておくと良いかと思います。

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