3.片麻痺って

さて、重田塾も第3弾を迎え、いよいよ片麻痺についてです。

片麻痺を含む麻痺の形の話をしようと思いますが、その前にみなさんの大好きな神経の復習です。
脳や脊髄は、神経の塊ですが、そこから出た末梢神経が筋に行き、収縮するように命令します。
実は、筋に対して神経は「縮め」しか命令しません。緩むのは命令が解かれるからです。
運動神経の細胞体は中心前回にあります。そこから出た神経線維が前回お話しした「内包」を通り、
延髄の錐体交叉で反対側に移り、脊髄を下り、前角細胞にバトンタッチします。
ここまでが1つのニューロンなので、「上位ニューロン」「一次ニューロン」などと呼ばれたり、
脳や脊髄の中なので、「中枢神経」あるいは「錐体路」とも呼ばれたりします。

さて、前角細胞から出た神経線維は、後角細胞からの感覚神経線維と一緒になって、脊髄神経根として、
脊柱を出て支配する筋へ向かいます。 ここで注意して欲しいのは、例えば前腕の筋を支配する神経線維が、
脊柱を出たあと、肩や上腕の筋のそばを通っても、それらの筋を支配していないということです。
神経線維と筋は一対一対応なのです。

 これらの基礎知識を踏まえて、麻痺の形を勉強しましょう。

① 単麻痺
これは、4本ある手足のうち1本が動かなくなる場合を言います。
上肢や下肢へ行く神経が障害されていますので、これは脊髄を出てからということになります。
これが末梢神経麻痺です。

② 対麻痺
これは、左右の下肢が麻痺した状態です。
左右が同時に障害されますので、脊髄を出る前ということになります。
生体でいえば胸髄以下の脊髄腫瘍なんかに相当します。

③ 片麻痺
一側の上下肢が麻痺した状態です。
脊髄に入ってしまうと、左右が近いので、片側のみが障害されることはめずらしいです。
となると、障害がよく起こるのは内包部分です。
その原因が脳梗塞や脳出血です。脳から四肢へ行く運動神経は、必ずこの内包を通ります。
内包は、間脳の両側にあるので、両側いっぺんに障害されることはほとんどないです。

④ 四肢麻痺
四肢すべてが麻痺した状態です。
これまでの麻痺を障害部位で整理すると、脳の中では片麻痺、脊柱を出ると単麻痺、腰髄以下では対麻痺でした。
上肢への神経も障害しないといけないので、頚髄あたりで障害が起こらないと四肢麻痺になりません。

運動神経の特徴である
① 延髄の錐体交叉で左右が交叉する。
② 必ず2つのニューロンで構成されている。
を踏まえて、整理してみると、上記②、③、④は一次ニューロンは障害されていますが、
二次ニューロンは無事ですので、筋収縮は保たれ、痙性麻痺となります。
また、①は、一次ニューロンが無事でも、そこからの二次ニューロンが障害されていますので、筋収縮は起こらず、弛緩性麻痺となります。
さて、これらをふまえると、麻痺の状態から次のことが分かります。
弛緩性麻痺は末梢神経障害。
痙性麻痺は中枢神経障害。
痙性麻痺のうち、
対麻痺は、胸髄以下の障害。
四肢麻痺は、頚髄の障害。
片麻痺は、主に反対側の内包の障害。
感覚神経も同じように障害されます。
優位半球といわれる左脳が障害されると、言語障害が発生します。
今回は、ここまでです。

【まめ知識】
カルテ記載・報告時に役立つかと思い体位についてまとめました。

《立位》

  • 直立位
  • 中腰位:腰が引けた状態

《座位》

  • 半座位(ファーラー位):仰臥位より体幹を40度起こした状態
  • 半々座位(セミファーラー位):仰臥位より体幹を15~30度起こした状態
  • 長座位:脚を長く伸ばして座った状態
  • 端座位:ベッドから下肢を下げた状態や背もたれのない椅子に座った状態
  • 椅子座位:背もたれのある椅子に座った状態

《臥位》

  • 背臥位(仰臥位)
  • 腹臥位(伏臥位)
  • 側臥位:右が下なら右側臥位

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