10.脂質異常症って

これまでに片麻痺となる病態や、片麻痺に随伴する症状についてお話ししました。
今回は、脳血管障害の原因となる病態のお話しです。
すでに高血圧はお話ししましたが、今回は脂質異常症です。
以前は高脂血症と呼ばれていました。なぜ変わったかはあとでお話しします。

脂質異常症について
総コレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)のいずれか、あるいは両方が増加している状態をいいます。
血中の脂肪は蛋白と結合して「リポ蛋白」として存在しています。
リポ蛋白は、カイロミクロン、VLDL(超低比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)、
HDL(高比重リポ蛋白)に分けられますが、いずれもコレステロール、遊離脂肪酸、
リン脂質、トリグリセリド(中性脂肪)が異なる割合で含まれています。

脂質異常症は、大きく分けて二つあります。
① 一次性脂質異常症
家族性脂質異常症と遺伝的脂質異常症がありますが、区別しにくいものもあります。

② 二次性脂質異常症(40%)
原因となるものは、疾患(糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、
ネフローゼ症候群、慢性腎不全、閉塞性黄疸、その他)、薬剤(副腎皮質ホルモン剤、
一部の降圧剤など)や食事性のもの(高脂肪食、高糖質食など)です。
症状について
脂質異常症だけでは自覚症状は乏しいですが、高度の脂質異常症、
長期間続くことにより、合併症による症状を起こします。

① 血管障害による粥状動脈硬化症
心筋梗塞、冠状動脈硬化、脳梗塞、腎梗塞、閉塞性動脈炎。

② 黄色腫
膝、肘、手足、眼瞼、鼻、頚部、背部、肩甲部に脂肪が沈着。

③ 急性膵炎
トリグリセリドが1,000㎎/dl以上では急性膵炎を起こしやすいです。
診断は、血清脂質測定で、コレステロール、トリグリセリド、遊離脂肪酸、リン脂質などが高値を示します。
脂質異常症の基準
総コレステロール 220㎎/dl以上
中性脂肪 150㎎/dl以上
LDLコレステロール 140㎎/dl以上
HDLコレステロール 40㎎/dl未満(低HDLコレステロール血症)
となっています。つまり何でもかんでも高かったら悪いってことはないのです。
HDLコレステロールは、高い方がいいのです。だから高脂血症から脂質異常症に変わったのです。

じゃあ、治療は?
① 食事療法
LDLが多く含まれる肉の脂身などを制限し、HDLを多く含む不飽和脂肪酸を取るように心掛けます。
HDLを多く含む不飽和脂肪酸には、いわしやさばなどの青味の魚に多いEPA(エイコサペンタ塩酸)や
まぐろなどに多いDHA(ドコサヘキサ塩酸)および菜種油などの植物油があります。
中性脂肪の値が高い場合は糖分の摂取を控え肥満防止に努めます。

② 運動療法
HDLを増加させる働きがあります。

③ 薬物療法

じゃあ、ついでに肥満症について。
肥満とは、体内の脂肪組織が過剰に増加した状態です。そんなことは分かりますよね。
じゃあ、肥満症。これは肥満度が20%以上、あるいはBMI(body mass index)が25以上で、
肥満による健康障害がみられたり、肥満が原因となって健康障害を起こす危険性が高いと考えられる場合をいいます。

数値を出す方法として
① ブローカの式
標準体重(㎏)=(身長(㎝)-100)×0.9

② 肥満度(%)=(実測体重-標準体重)÷標準体重×100

③ BMI=体重(㎏)÷身長(m)2
BMI 判定 WHO基準
<18.5 やせ 低体重
18.5≦~<25 正常 正常
25≦~<30 肥満(1度) 前肥満
30≦~<35 肥満(2度) Ⅰ度
35≦~<40 肥満(3度) Ⅱ度
40≦ 肥満(4度) Ⅲ度
理想体重はBMI22とする。

じゃあ、肥満の原因は?
① 単純性肥満(98~99%)
過食や運動不足が原因

② 症候性肥満
内分泌疾患(クッシング症候群、甲状腺機能低下症など)、視床下部障害(間脳腫瘍など)、
遺伝性疾患(ローレンス・ムーン・ビードル症候群など)、薬物(副腎皮質ステロイド薬など)などが原因
症状なんですが、初期には症状がないです。進行すると、運動時の動悸、呼吸困難、飢餓感、
食欲旺盛、過食、肥満、月経不順、不妊、男性の性欲減退、湿疹、摩擦痛、歩行障害などを生じます。

診断としては、
① 身長、体重、体脂肪量を測定する。

② 血糖値、血清インスリンが高値となる。

③ 高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高尿酸血症を生ずる。

最後に治療です。
① 食事療法
摂取エネルギー制限。

② 運動療法
適度な運動を行う。
心疾患、感染症、脳血管障害を合併することが多いので要注意です。

さて、これからは生活習慣病を中心にいくつかの疾患のお話しをしていきます。ご期待あれ!

前のページへは、ブラウザの戻るボタンでお戻りください。