17.変形性関節症って

さて、久々の重田塾です。
今回は、変形性関節症です。つまりOAです。

変形性関節症とは、老化や小外傷により関節の循環が悪くなり、関節軟骨に退行性変化、
骨に反応性増殖性変化を起こし、関節の可動制限と痛みを起こす非炎症性、進行性疾患と定義されます。
つまり、年を取ることで起こり、徐々に進んで行くということですよね。
じゃあ、どんな人に多いかといえば、中年以降の肥満の女性となります。

分類としては、

① 一次性変形性関節症
加齢に伴う関節軟骨の変性が起こる物です。膝関節や脊椎に多いです。

② 二次性変形性関節症
関節炎や関節の外傷、関節の形態異常(例:先天性股関節脱臼)などが原因となって起こるものです。
股関節に多いです。

覚えておく必要はないですが、成因を見ておきましょう。

① 全身的要因
素質、肥満、血流障害など

② 局所的要因
ア.関節に加わる機械的ストレス
イ.その他の関節疾患
a.先天性疾患(先天性股関節脱臼、内反足など)
b.感染(化膿性関節炎、結核性関節炎など)
c.非特異的炎症(関節リウマチ)
d.代謝性疾患(痛風、アルカプトン尿症)
e.関節血腫(血友病)
f.外傷(関節面骨折、半月板障害など)

さて、OAが起こりやすい部位を考えると、もちろん負荷がかかる関節です。
つまり膝関節、股関節、脊椎などです。
しかも負荷がかけ続けられてきた高年令に多く、普通は単独の関節に起こります。

 

大切な症状です。

① 疼痛
重いものを持ったり、運動をすると生じます。
特に運動開始時に痛み、無理をすると増強します。
そう運動開始時痛ですよね。

② 運動制限
痛みに対して、筋緊張を生じ、次いで関節包の肥厚、軟部組織の拘縮、関節面の変形によって運動制限が起こります。

③ 変形
関節面の変形から関節全体の変形へと進行していきます。

④ 関節液貯留
膝関節に多量に貯まりやすいです。ただし、非炎症性です。
検査所見としては、関節裂隙が狭小し、骨棘が形成され、膝蓋跳動が見られます。
膝蓋跳動とは、仰臥位の患者の大腿の下部を圧迫しながら、膝蓋骨を押します。
貯留液がある時は、膝蓋骨の関節軟骨と大腿骨下部の関節軟骨が触れ合って「コツコツ」という触感が得られます。

 

簡単に治療も見ておきましょう。

① 保存的療法
安静、鎮静剤投与、温熱療法など。

② 手術療法
関節面の変化が強く、保存療法で寛解しない場合は関節端切除術を行います。

③ アフタケア
減量、洋式トイレ・装具・靴・杖の使用についてのアドバイス。

ここまでは概論です。ここからは各関節について見ていきます。

 

まずは、変形性股関節症です。
まず、女性に多いことは覚えておいてください。
成因です。

① 一次性
約15%を占めますが、原因不明です。

② 二次性
約80%を占めます。先天性股関節脱臼・亜脱臼、臼蓋形成不全などに続発します。
先天性股関節亜脱臼、臼蓋形成不全が軽症で放置された場合、20歳前後で症状が出てきます。
これは、加齢と荷重のためです。
他の原因疾患としては、化膿性股関節炎、大腿骨頭すべり症、大腿骨頭壊死、ペルテス病、関節リウマチなどがあります。
ペルテス病とは、6~8歳の男子に多いです。
原因は不明で大腿骨頭への血流が障害され骨頭壊死をおこす疾患です。
3年くらいで治癒しますが若干の変形を残すことがあります。
症状としては、股関節痛、トレンデレンブルグ歩行、跛行、運動制限などがみられます。
トレンデレンブルグ歩行とは、跛行、つまり「びっこ」の一種ですが、股関節の外転筋力の低下のため、
患側で片足になった時、骨盤は健側へ、肩は患側へ下がるものです。
体が揺れて歩いているようにみえます。

 

治療としては、

① 保存的治療
生活指導(減量、杖の使用、長時間の立位や歩行を制限)、補装具、薬物。

② 観血的治療
骨切り術、人工関節置換術、固定術。

 

続いて変形性膝関節症です。
40歳以上の肥満女性に多いです。
成因です。

① 一次性
関節軟骨の退行性変化
誘因:加齢、生活様式、内反膝など。
増悪因子:動脈硬化、高血圧、脂質異常症、糖尿病など。

② 二次性
半月板損傷、靭帯損傷、関節炎など
一次性が多いです。

 

症状についてです。

① 初期症状
運動開始時痛(正座後立ち上がる時など)、階段昇降時・坂道や長時間の歩行で痛みが起こります。
膝関節内側関節裂隙部の圧痛、関節液の貯留などが見られます。

② 進行症状
関節の変形(主にO脚)、側方動揺、関節可動域制限、大腿四頭筋の筋力低下・萎縮などが見られます。

 

診断も見ておきます。

① X線
関節裂隙狭小、骨棘形成、骨硬化、関節内遊離体(関節ねずみ)
関節ねずみとは、増殖した骨片がはずれ、関節内で移動し、痛みを生じるものです。

② 膝蓋跳動

 

治療です。

① 保存的治療
a.生活指導:体重減量、洋式トイレの使用、杖の使用、長時間立位・歩行の制限、正座を避けさせる。
b.理学療法:温熱療法、筋力強化訓練(特に大腿四頭筋の等尺性収縮訓練)
c.装具:内反膝には外側を高くした、また、外反膝には内側を高くした楔状足底板の使用。
d.薬物:基本的には外用薬を補助的に用い、原則として鎮痛薬の連用は控える。
e.関節内注入療法:ヒアルロン酸ナトリウム、キシロカイン、ステロイド薬(頻用は不適当)。

② 観血的治療
関節鏡視下郭清術、頚骨高位骨切り術、人工膝関節置換術。

 

次は変形性脊椎症についてです。
これは、老化に伴う椎間板の変性により椎間板の厚さは減少し、辺縁部の骨縁において線維輪が膨隆し、
外層線維輪との間に裂離を生じ、骨膜が剥離する結果、反応性の骨増殖が起こってきます。
これが骨棘といわれるものです。
同時に椎間関節にも影響が及び、変形性関節炎が起こってきます。
X線写真でみますと、椎間板の狭小化、骨棘形成、それによる椎間孔の狭窄、脊柱管狭窄などが認められます。
X線写真上にはこのような変化がみられても、何等の自覚的・他覚的症状のみられない例もかなりあります。
X線写真には写らないような軟部組織(圧迫による脊髄の循環障害、靭帯への影響など)の変化を起こしている例もあります。

まずは変形性頚椎症についてです。
老化現象の1つとして現われる変形性脊椎症が、頚椎に現われたものです。
40歳以降の男性に多いです。
頚椎は7個ありますが、運動性に富むC5・6、C6・7、C4・5の順に起こりやすいです。
ちょっと難しいですが、病態生理も見ておくと参考になります。
頚椎部の脊柱管は上部ほど広く下部に向かって細くなっています。
そのもっとも狭い部分は第5~第6頚椎部です。
一方、脊髄はちょうどその場所で頚膨大部を形作っています。
そのために脊柱管と頚髄のサイズが近接しており、余分のスペースはもっとも少ないのです。
したがってこの部分で脊髄は容易に圧迫を受けやすい構造になっています。
さらに頚椎はその生理的弯曲がこのレベルでもっとも大きく、
このことでも頚部変形性脊椎症の症状がこの部分に出現しやすいことになるのです。

 

症状についてです。

① 椎間板ヘルニアと症状が似ている。

② 初期症状
肩こり、背部痛、項部痛、頚部痛、緊張型頭痛、肩から上肢にかけての放散痛など。

③ 神経根症状
手指のしびれ感や握力の低下、母指球や小指球、虫様筋の萎縮、巧緻運動の障害など。

④ 脊髄症状
下肢の痙性麻痺により歩行障害、さらに膀胱直腸障害。

 

一応、診断です。

① X線検査
椎間板狭小、椎体辺縁の骨棘形成、椎間孔狭小、椎間腔狭小。

② CT、ミエログラフィー
X線に同じ。

③ MRI
脊髄の圧迫状況。

④ 徒手検査
スパーリングテスト、ジャクソンテスト、イートンテスト、上下肢の深部腱反射、知覚検査など。

 

治療です。

① 保存療法
ア.局所の安静
イ.局所の固定:頚椎カラーを用いる。
ウ.牽引療法
エ.薬物療法:消炎鎮痛剤
オ.温熱療法

② 手術療法
ア.前方除圧脊椎固定術:1、2椎間の場合。
イ.後方除圧術・椎管拡大術:多椎間の場合

 

最後に変形性腰椎症についてです。
老化に伴う骨変化によって腰痛を生ずる疾患です。
これも40歳以降の男性に多いです。

 

いきなり症状です。

① 疼痛:
腰痛、腰背部痛、坐骨神経痛など。
痛みは激痛ではないですが、体動時に増強し安静で改善します。
同一姿勢から次の運動に移る時に増強します。

② 下肢の知覚低下、筋力低下、運動制限など。
診断は、X線検査で椎間板の狭小化と椎体隅角部から生ずる骨棘がみられます。

 

最後に治療です。
① 安静や固めのベッドの使用
② 軟性コルセットの装着
③ 腹筋や腰背部筋肉の筋力強化
④ 温熱療法
⑤ 薬物療法
⑥ 硬膜外ブロック注射など。

以上です。今回は長かったですね。お疲れ様でした。悪いです。

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