18.関節って

私たちは、何らかの原因による関節変形などを施術することも少なくありません。
その原因には、痙性麻痺や弛緩性麻痺などがあります。
しかし、それらを理解する前に、関節の基本的な構造、そして運動、さらにはその運動に関与する筋、
拮抗筋などの基本が分かっていないと困ります。
基本を理解しないでの応用はありえません。
応用だけを理解した気になっても、ちょっとした変化球には対応しきれません。
そこで、今回からは関節に関する基本からの復習を行おうと思います。
もう一度、一緒に復習していきましょう。
その上での応用に入っていきましょう。

さて、全身には200個の骨があります。自分で数えてみてください。
200個もの骨が何らかの形で連結しています。
大きく分けて、骨間に結合組織が挟まれる場合と、2つの骨を外から鞘状に結合組織が包む場合、
つまり関節とがあります。

前者には、
靭帯結合:前腕や下腿のように、2骨が靭帯により結合される場合
縫合:頭蓋骨間に見られるように、わずかな隙間を少量の結合組織が満たし結合する場合
釘植:歯が歯槽にはまり、その間を結合組織性の歯根膜により結合されている場合
軟骨性の連結:恥骨結合や椎体間結合のように、骨と骨の間に軟骨が介在し結合する場合
があります。ただし、これらはほとんど動きません。

さて、ここからが本題です。関節の説明です。

まずは関節の基本構造です。
関節を作る2骨のうち、凸面の方を関節頭、凹面の方を関節窩といいます。
関節頭と関節窩の表面を関節面と呼びます。
この関節面は、関節運動において、直接ふれ合い摩耗も激しいので、関節軟骨と呼ばれる硝子軟骨が覆います。
関節頭が関節窩にはまり込んでいるのですが、受け皿である関節窩が小さく安定しない場合があります。
そのような関節窩では、その周囲に関節唇と呼ばれる線維軟骨が付着し、関節窩を大きく深くします。
肩関節や股関節がその例です。

関節頭と関節窩を鞘状に包む結合組織が関節包です。
関節包により作られた閉鎖腔が関節腔です。
関節包は、2重の膜で、外層が線維膜、内装が滑膜です。
関節腔に面している滑膜からは、滑液(潤滑油)が関節腔内に分泌されます。
関節面の適合性をよくするために、滑膜から線維軟骨性のヒダが突出する場合があります。
これは形により、関節半月・円板と呼ばれます。関節半月は膝関節、関節円板は顎関節、胸鎖関節に見られます。
関節包は弱いので、補強のため関節包の外に密性結合組織である靭帯が貼ります。

靭帯は、結合の補助の他、過度な運動の制限を行います。
特殊な靭帯として、靭帯が関節腔内にあるものを関節内靭帯といいます。
膝十字靭帯、大腿骨頭靭帯などがその例です。

このように関節は、骨・軟骨を結合組織である関節包が包み、その外層に靭帯、筋、皮膚があるのです。
この関節を構成している組織のうち、骨と軟骨の障害で関節が動かなくなったものが強直です。
それ以外、つまり、関節包、靭帯、筋、皮膚などの障害で動きが悪くなったものが拘縮です。
私たちの施術対象となるのは、もちろん後者の拘縮です。
強直は骨切り術などの外科手術が必要となります。

さて、基本構造は理解してもらえたでしょうか?
続いて、関節の分類ですが、まずは形状による分類です。
関節の特徴と例を示しますが、具体的な関節の説明は次回以降に行います。
球関節:関節頭は球場です。
関節窩は、関節頭に合わせてお椀のように丸くくぼんでいます。
最も可動性が大きいです。
例は肩関節、腕橈関節です。

臼状関節:形状は球関節に似ていますが、関節窩が深くなっています。
そのため、球関節より運動制限があります。
例は股関節です。

顆状関節:これも形状は球関節に似ていますが、関節窩は逆に浅くなっています。
そのため、関節頭が逸脱しやすくなってしまいます。
それを防ぐため、側副靱帯が発達し、回旋運動が不能となっています。
例は中手指節関節、中足趾節関節、膝関節です。

蝶番関節:ドアの「ちょうつがい」のような形状です。
ですので、一方向にしか運動できません。
例は腕尺関節、指節間関節です。

ラセン関節:形状は蝶番関節に似ていますが、関節窩がラセン状になっています。
例は距腿関節です。

車軸関節:名前の通り、車のタイヤが転がるような関節です。
これも一方向にしか動きません。
例は上・下橈尺関節、正中環軸関節です。

楕円関節:関節頭がタマゴのような楕円形をしています。
関節窩もそれに応じて楕円形をしています。
運動は、長軸方向と短軸方向の2方向です。
例は橈骨手根関節、顎関節、環椎後頭関節です。

鞍関節:この形状は特殊で、関節頭も関節窩も馬の鞍のような形をしています。
この関節面が相対するのではなく、90°回転して関節を作ります。
運動方向は直交する2方向となります。
例は母指の手根中手関節、胸鎖関節、大腿膝蓋関節です。

平面関節:関節頭も関節窩も関節面は平らです。
ですので、ずれるように動きます。
例は椎間関節、肩鎖関節、外側環軸関節です。

半関節:この形状は平面関節に似ていますが、関節面に凹凸があります。
そのため動きは、平面関節より少なくなります。
例は仙腸関節、脛腓関節、手根間関節、足根間関節です。

上記の関節を復習の上で、運動軸によって分類してみます。
1軸性関節:蝶番関節、車軸関節、ラセン関節
2軸性関節:楕円関節、鞍関節
多軸性関節:球関節、臼状関節
となります。

さて、最後に関節の運動についてです。
関節の角度が0°とは「解剖学的正位」の状態をいいます。
これは、直立位で、前腕を体側に下垂し、手掌を前方に向けた姿勢のことです。
屈曲と伸展:矢状面において、両骨間の角度を狭くする運動が屈曲、広くするのが伸展と定義されます。
上腕・大腿では前方へ挙げるのが屈曲、後方へ挙げるのが伸展です。
外転と内転:前頭面において、体肢が正中面から遠ざかる運動が外転、近づくのが内転です。
内旋と外旋:体肢において、縦軸を運動軸とする運動を回旋といい、
そのうち、前面を内方へ向ける運動を内旋、外方へ向けるのが外旋です。
前腕においては、手掌を伏せる運動が回内、手掌を上に向けるのが回外といいます。

以上です。これらを踏まえて次回からは、主な関節の各論をお話しします。

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