31.筋萎縮性側索硬化症(ALS)って
久々に重田塾です。
今回は、筋萎縮性側索硬化症、いわゆるALSの勉強です。
これは、進行性の上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが変性する疾患です。
両者が混在するのが特徴です。
成因は、不明ですが、感染説(ウイルス)、中毒説(金属類)、栄養代謝障害説などがあります。
いずれも「説」が付きますので確定ではありません。
40~50歳代に発病し、男性に好発します。
さて、症状です。
進行は緩徐です。
初発症状が上肢に始まる症例が50%、下肢に始まる症例が25%、球麻痺から始まる症例が25%あります。
四肢の症状は通常一側遠位部から始まり両側性となります。
上肢の症状は母指球、小指球や骨間筋の筋萎縮、筋力低下で、下肢の症状はつまずきやすさ、
階段昇降時の疲れやすさ、球麻痺はろれつ不良、食事時のむせで気づかれることが多いです。
下位運動ニューロン症状は、四肢・体幹の筋力低下(弛緩性麻痺)・筋萎縮・筋線維束攣縮・深部腱反射低下
または消失がみられます。
筋線維束攣縮とは、顔筋や舌に現われ、筋線維束の不随意、孤立性の収縮によるもので、
筋を叩打した後で観察しやすくなります。
上位運動ニューロン症状(錐体路徴候)は、四肢・体幹は、筋力低下(痙性麻痺)、
腱反射亢進・ホフマン反射・バビンスキー徴候が60%でみられます。
ホフマン反射は、患者の手を回内させ、中指末節骨を下から弾いて伸展反射を起こさせた時、
反射的に母指と示指を屈曲すれば陽性、錐体路障害が示唆されるものです。
バビンスキー徴候は、足底を踵外側から小趾、母趾まで棒などでこすった時、
母趾が背屈し、四趾が拡がれば陽性、錐体路障害が示唆されるものです。
症状が進行すると全身の随意筋萎縮、筋力低下のために眼球運動を除いて
ほとんど自力では動かせなくなり、呼吸も困難となります。
知能や眼球運動はほとんど障害されません。
感覚障害、直腸膀胱障害はありません。
診断についてです。
① 筋電図検査:線維自発電位が増加し、刺入時活動電位も増加します。
筋収縮時には巨大電位がみられます。
② 血清CK:上昇がみられます。
治療ですが、有効な治療法がないので、対症療法にとどまります。
理学療法を行い、健康人同様の日常生活をさせるように心がけます。
予後は、緩徐に進行し、平均2~3年で死亡します。5年生存率は約11%です。
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